Imitation
□The Before Story
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金属のぶつかりあう音、爆音、団員の声。
私は窓の外から争い合う団員を眺める。
……今日は半年に一度の魔導団、騎士団合同演習の日です。
決して内部争いなんかじゃありませんよ。
「カイン様。」
呼ばれた声に振り向くと、漆黒の忍が膝を折っていた。
「アゲハ、様子はどうですか?」
「現在、下位団員21名、上位団員14名負傷。魔導団の白魔導師が治療に当たっています。」
「ティアとウィルはどうですか?」
「上手く交戦しながら紋章札(クレストカード)を守っています。」
「そうですか。引き続き諜報活動よろしくお願いします。」
「はっ。」
私、指揮官直属の諜報部隊に属するアゲハは、再び演習の様子を偵察するために姿を消した。アゲハの瞬身の術は流石ですね。
演習のルールは至って簡単です。騎士団員、魔導団員混合の4人一組を作り、魔導団統帥ティアと騎士団統帥ウィルから紋章札(クレストカード)を奪うというもの。2人は半分ずつ紋章札を持っています。
奪えないケースの方が圧倒的に多いのですが、奪えたチームには特別ボーナスが与えられます。
それにこの合同演習では、働き次第で昇降格が決まります。
判断するのはもちろん私。
手元に大量の資料とペンを常備して、窓の側の椅子に腰掛ける。
……おや。
「あの騎士団員は降格ですね。あんなブービートラップに引っ掛かるなんて……。」
直ぐさま資料に降格を記す。
まあ、あのトラップはティアが仕掛けたのでしょう。
それにしても。
「……大体、1人で全団員のチェックなんて無謀ですよ。」
毎度のことながら、嫌になります。
「演習に参加するのは楽しいんですけどね……。」
かつて騎士団にいた現役時代を思い出します。
……何だか隠居した老人みたいな思考ですね。
溜息をつきながら、指揮官の定めに辟易した。