闇夜のセレナーデ
□白の魔王様
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「ああ、それはですね。簡潔に申し上げますと、魔族の娘では駄目だったからです。」
「は?」
「要は人間なら誰でも良かったんですよ。」
な……、「人間なら誰でも良い」って、そんなことのために私は連れて来られたの!?
「だったら!私じゃなくたって……」
「そうだ、リト様。髪を染めて下さいませ。」
「ちょっ、私は……!」
「黒以外でしたら何色でも構いませんので。今準備致しますから少々お待ち下さい。」
「ケイさんっ!」
――パタン
ケイさんは私の言葉を綺麗に躱して部屋を出て行った。
「何だか、上手く逃げられた気がする……。」
(莉緒、ちゃんとご飯食べたかしら。)
気にかかるのは、唯一無二の弟。
私がいなくてもちゃんと学校行ったのかしら、
しっかりしてるくせに家事能力だけは皆無だからなぁ、
……私が突然消えて、寂しい思いをしてるのかな。
「……莉緒。」
一言、呟く。
するとケイが戻って来た。
「用意が出来ました。何色に染めますか?」
「んー……。」
ケイが持って来た染髪剤は色とりどりで、リトは迷ってしまう。
「ケイさん、何で髪を染めなくちゃいけないんですか?」
「黒は魔界で最も高貴な色とされています。例え陛下の花嫁であろうとも、陛下の許可無しに身に纏うことは許されないのです。」
「へぇ……、そんな風習があるんですね。」