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□例えどのような責め苦が
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「意外ですね」
青い瞳が、いやらしく光った。
「君の感想に興味はない」
マスタングの声に苛立ちが混じる。
キンブリーは肩をすくめ、グラスに手を伸ばした。マスタングはわずかに顔を寄せ、脅すように囁いた。
「どちらだ。やるのか、それともやらないのか」
「これはまた、なんとも色気のない言いようですね。申し出の内容の割に」
ウィスキーを一口含み、味わって相手を眺める。
「貴方、私を口説いているのでしょう。でしたら、もっとしおらしくしてはいかがです」
今度はマスタングが肩をすくめる番だった。
「口説く?君をか?笑わせるな」
あさってを向いて吐き捨てる。
「相手は誰でも構わんのだ」
「では部下にでもやらせればいいでしょう。なんと言う名でしたかね……ハボック?あれなら貴方の命令とあればどんなことでも」
「だめだ」
きっぱり言い切られ、キンブリーは眉をひそめた。
「奴では、心に傷がついてしまう」
「私ならその心配はないと?」
「むしろ逆だろう」
キンブリーは喉を鳴らして低く笑った。
「素直ではありませんね。結局、私が必要だというのに。まあいい、今度だけは堪忍してあげますよ」
一息でグラスを干し、立ち上がった。
「さて、行きましょうか。良い家を知っています」
(続く)
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