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□恋とはどんなものかしら
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久しぶりに逢った恋人は、いつもと違っていた。蹴飛ばして扉を開け、私の手首を掴んで壁に押さえつけた。そのまま顔を寄せてくる。
灰色がかった青い瞳が、潤んでる。うなじでまとめた髪を解き、薄い唇をゆっくり開いて犬歯を見せ付ける。そして歌う。囁くように。
「Voi che sapete Che cosa e amor」
「どうしたの、ゾルフ」
「どうもしません」
口づけられた。吐息が甘く香る。ワインの香だ。
「酔ってる」
「酔ってませんよ」
舌を絡ませ、弄び、息つく暇も与えない。
「ね、お願い」
「どうしました」
「ここじゃ、いや」
止めてくれない。
笑いながら、耳たぶを噛む。軽く歯を当ててから、ゆるゆると沈めて行く。
「痛い」
「でしょうね」
「あ」
舌が、耳の中をくすぐってる。
「あ、ん、だめ」
「だめ?何がだめなんです」
見えないけど判る。今どんな顔してるか。
「実はお願いがありましてね」
舌で首筋を舐めおろしながら、私の脚を挟んで、こすりつけた。服ごしでもはっきり感じとれるくらい、硬く熱くなってるものを。
「な……に」
「酷いことがしたいんです」
手を離し、胸を掴む。指で乳首を挟み、ひねった。
「いた、い」
「でしょうねえ」
あいた手をスカートの裾から突っこみ、ショーツを引き裂く。
「いやぁっ」
「ああ、いい声だ」
酔っている……
「ええ、酔っていますとも」
言って私の膝をこじ開け、
「貴女に、ね」「あ、あ、あ」
一気に貫いた。
「裂け、る」
硬い。楔を打ち込まれたところが軋む。
「大丈夫ですよ、溢れるほど濡れています。私の服にまで滴っている」
愉しそうに、突き上げた。容赦なく。甘くて重い雷が、身体を走り抜ける。
「いいですよ、実にいい」
私の背を壁に押し付けて両脚を抱え、突き上げ続ける。のまれる。波に。快楽の波に。
「おや、どうしました?」
ゆっくり抜いていく。
「あ、いや」
笑みがひときわ大きくなった。
「や、いやあ」
囁いた。
「おっしゃい。どこに、何が欲しいのかはっきり」
叫んだ。
「ちょうだい、あなたのを、あたしのここに」
「不十分ですが」
「あああっ」
刺さる。
「許してあげます。でも離しませんからね、私の気がすむまで」
そして口ずさむ。
「Donne, vedete S'io l'ho nel cor. 」
夜はまだ始まったばかりだ……


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