その他色々

□赤毛の子
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「今日は、新しいお友達がたくさん遊びに来たよ〜!仲良くしようね!」


草間園の近くに、もう一つ小さな孤児院がある。


今日は、交流を深めようとか何とかで、

向こうの子達が遊びにくることになっていた。


「じゃあ、まず自己紹介をしていきましょうか!」


向こうの施設の子は、主に小さめの子が多く、

やっぱり俺より上の子はいなさそうだ。


「いっとき おとやです!四歳です!好きな食べ物は…カレーと、クッキーと、それと…いっぱい!!」


中でも一番元気そうな男の子。

どんな事情で施設に来たのかは知らないが

寂しくはないのだろうか。



「草間野分です。13歳です」


一通り自己紹介を終え

自由時間になった。


「おにーちゃん」


「どうしたの?」


さっきの赤毛の…

音也くん、だっけ。


「あそぼ!!」


爽やかな顔で笑う音也くん。

きっとこの子、将来かっこよくなるな。


「いいよ、何する?」


「ライダーごっこしよ!」


やっぱ男の子だなぁ。


「いいよ。」


どうして、こんなにも無邪気なんだろう。


何回も思うけど、

寂しくないのかな。



…なんて、聞けるはずないけど。


「やられた〜」


「ライダーは無敵なのだー!!」


音也くんは想像以上に元気な子で。


約一時間ライダーごっこに付き合わされ、コテンパンにされた。


「はぁ〜…」


さすがに疲れた。

「はい!おにーちゃん!」


その子がズイッと突き出してきた、飴玉。


「飴玉…」


数年前、草間園を抜け出した時

出会った彼の事を思い出す。


あの子も飴玉をくれたんだった。


「おいしいよ!」


なんか、一気に疲れが吹っ飛んじゃったな。


「おにーちゃんは、寂しくないの?」


不意にかけられた言葉。


まさか先に聞かれることになるとは。


「寂しくないよ」


本当の両親は、嵐の日に俺を捨てていなくなった。


でも、今はみんながいるから…


お兄ちゃんだから。



「僕にはね、パパもママもいないの」


「…どうして?」


「本当のママは事故ともう一人のママは病気」


養母がいたのだろうか。


「…パパは?」


「パパはしらない」


なんか、これ以上聞くことが出来なかった。


「でもね!僕は寂しくないんだよ!園の友達や先生がいるから!!」


音也くんは、歳のわりに大人だなと感じた。


弱いところを、何一つ見せようとしないんだ。


「みんな〜帰りますよ〜」


もうこんな時間か。


先生が音也くん達を呼ぶ声がする。



「おにーちゃんも、元気だして!!」


音也くんは、飴玉をもう一つ俺に渡すと

にこりと笑い、みんなのもとへ戻っていった。


…彼はエスパーか何かなのかな。


それとも、俺が気付かずに寂しい顔をしてたとか?



それにしても、すごい子供と出会ったものだ。
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