novel

□気づかない
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「影山くんって月島くんと同じ部活だよね?」

弁当を食べ終え、心地良くうとうとしていた最中、クラスの女子にそう聞かれた。

「月島くんってさ、彼女いたりするのかな?」

彼女…
さぁ、俺もしらない。
月島とはそういう話はしないし、聞こうとも思えない。

「さぁ、知らない」

「じゃあ今度聞いといて」

「はぁ?なんで俺が…」

「よろしくね」

女子とは恐ろしいものだ。
都合の悪いことは聞き取れないような体のしくみになっているらしい。

面倒くさい。

あいつらにはあとでいないって適当にいっておけばいい。

そんなことより今は眠さが勝り、机に突っ伏して眠ることにした。

……あいつってモテるんだな

意識が消えゆく中、ふと頭をよぎる。
そう思ったら急に胸のあたりがモヤモヤしだす。

このなんともいえない感覚が不愉快で、俺は目を閉じた。

寝て起きればこんな、モヤモヤも消えるだろうと思いながら。



だけど放課後になって部活が始まっても、このモヤモヤは消えてくれなかった。
おかげで授業に集中できず、5,6時間目の内容がまったく入ってこない。
もとい、もとから聞く気などないが。

部活にも身が入らない。
一足さきにサーブ練習をしてみるも、いまいち勢いがたりない。

モヤモヤと同時に自分の中に消化しきれない苛立ちを覚え始める。

「なんだってんだ」

俺は持っていたボールを思いっきり打った。
コントロールなどしていないボールは勢い良く壁に当たり、体育館中に響くほどの大きな音をたてる。

「あれ?ご機嫌ナナメですか、王様」

聞き慣れた声に胸がキュンとする。
声のするほうにむくと体育館の入り口に月島がたっていた。

あれ?なんでだろう。
モヤモヤが消えた……。

気に入らないはずのあいつの顔を見たら、体がすっと軽くなる。
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