届く距離に

□ 静かに
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少女の心は荒んで


少女の思いは歪んでいて


少女の行動は錆びていた。




――少女は繰り返し壊れる。


己の心は気にせず―
己の身体は気にせず―
己の周りは気にせず―



少女は壊れたラジオのように、繰り返し続ける。


幸せを信じて暮らし。
幸せを手に入れようと自らを捨て。
幸せを持続させようと人を殺す。


少女に残るものはなにもなく。
只、被害者を偽り続ける日々を手に―少女は夜な夜な刀を振るう。



何もかもが血に染まる。
自分自身も、目の前の人間も。

何もかもが錆び続ける。
刀も、自分自身の心も。


考えるのを諦めたのはいつからだっただろうか。
自分を否定してきたのはいつからだっただろうか。
被害者を偽り続けたのはいつからだっただろうか。
どうしようもない加害者になったのはいつからだっただろうか。

愛を欲したのは――?
逃げ始めたのは――?



応えは見えているはずだった。

見えているのに見ようとしなかった。

背を向け続けた。

只、逃げ続けた。



(見てごらん)

(ねぇ、撫子)

(目を開いてごらん)

(貴女の大切な人達)

(せっかくできた大切な人達)

(いなくなっちゃうよ)

(消えちゃうよ)

(死んじゃうよ)



少女は只、否定をし続けた
           否
          いやだ
         ちがういやだ
        血が、肉が、骨が
       赤い、赤いよ、鮮血、朱

(貴女のせいだよ)

       ―違う

(貴女が悪いんだよ)

       ―違う、私じゃない

(貴女がいけないんだよ)

       ―違う、私じゃない……



罪の痕は消えない。
罪の痕が痛い。
罪の痕が――痕が、罪が、罰が



消えることがない、消せない罪は少女の中で蠢き続ける。





少女の心は否定ばかりで


少女の気持ちはただまっすぐで


少女は只、赤黒く錆び続ける――















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