届く距離に

□ 人斬り事件
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「なっ、なんだ貴様は!」


先ほど警告したはず。
なんなのだろうこの男。
私の姿を見た瞬間に声をあげるなんて失礼。


「その刀…貴様人斬りだな!?」


成る程、私がいけなかった。
確かに血がべったりとついた刀を見れば誰でも声をあげるね。
失礼しました。


「わ、私も殺す気なのか!」


「大丈夫ですよ」


私の言葉に男は希望に満ちた顔をした。



「大丈夫です」




男の表情が固まる。
私の顔はきっと笑みに満ちているのだろう。
私の手はきっと刀を振り下ろそうとしているのだろう。






「痛みは感じないように人思いに斬りますから」




この男だって、人斬りの―討伐の『リスト』に入っているんだから。



私の仕事は絶対。
絶対に成功させなければあの御方に捨てられてしまう。



男の悲鳴が私の耳を劈く。

嗚呼―耳障りだ。


これだから人斬りはめんどくさい。




━─━─━─━─━─




別の男の悲鳴が聞こえてきた。
あの男の仲間かなにかなのだろうか。

ごめんなさい。
貴方達に私的な恨みはないのです。



ただ、あの御方の命令なので仕方ない。
あの御方の敵は―私の敵。



空を見上げると無数の星。
星を見れば、全てを忘れられる。


さきほど斬った男の容姿、髪型、声、立ち姿。





嗚呼、なんて綺麗な月だろう。














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