桜吹雪

□第弐話
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「「「「「しょッ」」」」」


グー、グー、グー、グー、チョキ


誰もが見たことのある手の形がそろう。
チョキを出し、負けた悟空が悲痛な声をあげる。



「おいっ、どこまで歩くんだよッ!」


荷物を重そうに引きずる悟空のほうを振りかえる大人達。


「こんな岩場じゃジープ通れませんからねェ…」



「まさか悟空が八連敗するとは」



雛悸は知らない。

悟空が初めにチョキを出す癖があることを。
自分が初めにグーを出す癖があることを。
自分以外の大人組がそれに気づいていることを。




「持とうか?」


いたたまれなくなった雛悸が悟空に声をかける。


「やめとけ、悟空に変なクセがつく」


三蔵が雛悸を止める。




「…だって、ごめんね悟空」



助けてもらえなかった悟空の怒りが白竜にぶつけられる。




「お前さぁーっ
ジープ以外には変身できねーのかよ白竜!!」



「先生―
動物が動物を虐待してまーす」


むきょーっと怒る悟空に白竜はただ「ピーッ」と鳴くことしかできない。



「…このままだと山越える前に日が暮れちまうな」



何事もなかったかのように話題を変える三蔵。





「一晩の宿をお借りしますか」




八戒の視線の先には―
高く聳え立つ、大きな寺があった。
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