短編集

□お酒
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『なぁ、ジャーファル』

『なんですか?シン』

ジャーファルは視線を寄越すことなく、書類を読み続ける

『なんで酒、飲まないんだ?』

この間の酒宴でも飲んでなかったろ?
そう言えば、ため息をはいて視線を寄越した

『酔っ払いを介抱する者が必要でしょう?
それに、酔った貴方が何をしでかすかわかりませんからね』

それに言葉を詰まらせる
が、ジャーファルは気にせずにまた深くため息をはくと、書類を読む

『…酒は嫌いか?』

『別に…好きでも、嫌いでもありませんよ
たまに寝酒を飲んだりしますしね』

『へぇ…ジャーファルの酔った姿、見てみたいなぁ』

『酔うまで飲みません
酔っている間に何かあったら大変ですし…
酔って、いらないことまで話したくはありませんから』

その言葉に、俺は首を傾げた

『いらないことって…?』

『……そろそろ本腰入れないと、今日も出掛けられませんよ?』

『ギクッ…知ってたのか…;』

『えぇ…節度を守っているのなら構いませんよ』

確認し終わった書類をまとめて机に置くと
頑張ってくださいね
とだけ言って去っていった





「ん……しまった…
居眠りしてたか……」

書類の確認をしながら、先程まで見ていた夢を思い出す

(あれはいつ頃だったか…
確か…シンドリアを建国して間もない頃か…?)

あの時言っていたジャーファルの"いらないこと"はまだわからないまま

シンドバットは小さく息をはいた

「っと、これはジャーファルに確認してもらわないとな…」

最後の書類には、ジャーファルのサインが書かれていなかった
空を見上げて見えるのは輝く星々
そして、闇夜を照らす月

(ジャーファルみたいだ…)

彼を思い浮かべれば、自然と笑みが浮かぶ
しかし、同時に浮かんだ、浮かべてはならない感情に苦笑を溢す

(俺は、ジャーファルの家族なんだ
こんな感情を、持ってはいけない)

また小さく息をはくと、シンドバットはまだ書類整理をしているだろう彼のもとへ向かった



部屋へ向かえば、案の定明かりがついている

「ジャーファル…?」

控え目にノックしたが、中から返事はなかった
不審に思い、中に入る

「ジャーファル?」

室内を見回せば、机を占領する書類の山
その反対側に、彼はいた

(寝たのか……ん?)

甘い酒の匂いに、シンドバットは首を傾げた
よく見れば、机の上に酒ビンとコップが置かれていた
残りの量からして、1杯程度しか飲んでないようだ

「ジャーファル…ここでは風邪を引く
ベッドにいきなさい」

「んぅ……シン」

「っ…!!」

思わず、肩を揺すっていた手を引っ込めた

「シン……いい加減、仕事…しなしゃぃ」

スースー
と寝言を言うジーファルに、ガクリと肩が落ちた

「まったく…この仕事バカめ」

言いながらも微笑を浮かべたシンドバットは、ジャーファルを横抱きにする
向かうはベッド
邪な感情はないと言えば嘘になるが、一応ない






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