捧げ物
□放課後の商店街デート
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今日は部活が珍しくなかった。
制服のままで大丈夫だよね?、そう今更思う。
制服を着てる方が私らしい。
校門の前で待ち合わせてるのは中学から付き合っている初霜千鬼丸は、他校だけど時々こうやってこっちの学校に顔を出す。
「遅えぞ雪奈」
周りの注目を集めてる千鬼丸は、自分が悪い意味で注目されてると、思っているが良い意味で注目されてるとは知らない。
「ごめんなさい、先生に怒られないように隠れながら走ったつもりなんだけど……」
「隠れたって…… お前は忍者か!」
いつもの会話は変わっていないけど、変わったのは彼の身長。
前は小さかったと思ったけど、大きくなっていて、私の身長をとうに超えていた。
「早く行くぞ
商店街は待ってくれねぇからな」
そう言って私の手を引いて、走り出す。
彼の走りに合わせて走ると、数分後には商店街に着く。
八百屋や肉屋、魚屋が多く建ち並ぶ商店街はいつも賑わっていた。
見慣れてるせいか、買うことはせずに商店街を見ながら歩いてるのだ。
「本当、今日も賑わってるな」
「そうですね」
周りを見渡して見るといつもの商店街。
相変わらず、変わっていなく安心した。
「あの店の看板、綺麗になったみたいですね」
「あの店の看板、ボロボロだったもんな」
何気ない話でもただ楽しいと思えるのは何故だろう。
千鬼丸と一緒だったからかな?
自分でも分からないけれど、楽しいと思える。
何気なくていつもの日常は、少しのことでも変わる、そう教えてくれたのは千鬼丸だった。
「雪奈、あの店の看板犬見つかったみたいだな」
「お爺さん、とても嬉しそうですね」
彼と一緒に見るだけ商店街も楽しいと思える。
私たちは、暗くなるまで商店街を歩いて回った。