捧げ物

□放課後の教室で
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(ーー何だか……いつもと違って恥かしい)

この二人、風間千歳と涼森雪奈の二人しかいない放課後の教室は、静まり返っていた。
いつもなら、この放課後の教室が賑やかになる。

(ーー何でこんな時に限って髪結んでねぇ雪奈に会うんだよ……)

雪奈と目を合わせないようにしている千歳は顔を赤くしていた。
この状態になったのは数分前……、いつものように剣道部が終わって珍しく早退した千耶を抜きに雪奈と帰ろうとした時だった。

雪奈の担任の教師が教室に残ってる彼女に早く帰るように言われたのだ。
いつものように帰ろうと、誘おうとして雪奈のクラスの教室に行ったとき、彼女はいつもと違い髪を解いていた。

「もしかして、雪奈……か?」
「はい、私以外に誰がいると言うのですか?」

いつも見てる男っぽい雪奈と違い、幼馴染みが女らしく見えた。
髪は長く、腰まで届くんじゃないか、と言うくらいの長さの雪奈から視線を反らす千歳。

「千歳、どうしましたか?」

気になって声を掛ける雪奈に何でもねぇよ!、と言う千歳。
わけも分からず千歳が答えるのを待っているが彼は黙っていた。

微妙な空気が流れる中、雪奈も視線を反らす。

そして、今に至る。

(ーーいつもみたいに誘えば良いんだよな
あのに、何か違って言い出しにくいな……)

いつもの幼馴染みが女らしくなって言いづらくなっていた千歳とそうとも知らずに黙っている彼との間に微妙な空気を感じた雪奈。

その時、キーンコーンカーンコーン、とチャイムの音がした。
時計を見上げると下校時間の五分前になっていた。

「そのよ……そろそろ、帰ろうぜ」

照れながら言う千歳の言葉に頷く雪奈。
幼馴染みを異性と感じた千歳は、二日は雪奈とまともに話せなかった。

雪奈がそれが彼の勘違いと知るまでは、彼を怒らせたのかと悩み謝ろうとしていた。

そんな二人の放課後の教室での出来事だった。

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