捧げ物

□とある夫婦の朝
1ページ/1ページ


一ヶ月ほど前、大手株式会社の風間コーポレーション現社長の風間千歳とその秘書をしていた涼森雪奈が高校時代からの交際を経て、結婚した。

二人の結婚を一番喜んだのは、本人たちではなく周りであったが……。

だが、一つ大きな問題があった。
それは、妻である雪奈が家事に関して全くと言っていいほど、知識がなかった。
一ヶ月の間に大分慣れて来たがまだまだなところもある。
特に料理に関しては分量を間違えたりすることが多く、味が辛かったり甘かったりすることが多い。
ご飯がお粥状態になるのは珍しくない。

「千歳、ごめんなさい」

白いシンプルなエプロンを着けた雪奈は、起きて来たばかりの千歳に謝る。

「いや、まさかと思うが……」
「豆腐の味噌汁なら大丈夫です」

自信持って言う雪奈だが千歳の心配は味噌汁の味が心配だった。
雪奈は東と西で違う豆腐が分からなく二種類の豆腐を本人は切ったつもりであろうだが切れていないものをまとめて入れたくらいだ。
味噌もまだ残ったまま出されたことがあった。

「そういえば、今日の予定は何だったか覚えてるか?」

何とか話を変えようと誤魔化そうとする千歳。
それに気付かずに雪奈はポケットから手帳を取り出す。

「はい、十二時に幹部らと今後の会社方針とプロジェクトについての会議があります
三時には取り引き先の社長との会合があります」

雪奈がそう言うと会合あんのかよ、と呟きながら味噌汁を飲む。
今日のは大丈夫だったな、そう内心で思いながら今日の仕事について溜め息を吐きながら味噌汁とお粥を食べる。

風間家の平和な朝はこの会話から始まるのだった。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ