lovely★complex

□天国から地獄
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俺は今、恋をしている。
初めて会ったとき、一瞬で目を奪われた。
所謂一目ぼれだ。

それからほとんど毎日、その人の家にきている。
期末試験の勉強をするという理由で。


「なーなー、今日は小泉の姉ちゃんおらんの?」

「あー、なんか午前中は出かける言うとったわ。もう昼やしかえってくるんちゃう?
 勉強の邪魔やったらこの家から追い出すけど」

「いやいや、そんなんせんでええよ。むしろここに来てほしいし」

「あんなんおったら勉強できへん」

あー、そうかもしれへんな。あの人がおってくれたら勉強なんてどーでもええ、ってなるわ。

にしても羨ましいな、こいつ。
あんなかわいらしい人が姉ちゃんなんて。

あーーー、早く帰ってけーへんかな。

「なぁ、あんなんの何がええん?」

目の前の、いかにも真面目って感じの男が俺に聞く。

「どこがって!全部や!!ぜ・ん・ぶ!!
 兄弟のお前にはわからへんわ。
 あんな姉ちゃんがおって、お前は世界一の幸せもんや」

「あれがおらんかったら俺はもう少し幸せやったわ」

かーーー
ほんま贅沢なやつやで。

俺がもしあの人と一緒の屋根の下で暮らしとったら、きっとドキドキして
夜もまともに寝られへんと思うのに
こいつはそんなこと何一つ気にせんと
ぐーすかぐーすか朝まで寝とんねやろ。

「あ、せや!!小泉、姉ちゃんに俺のこと紹介してや!」

「はぁ?」

「だから、まずは小泉のお姉さんとお友達になって、
 そっから俺のええとこめっちゃ知ってもらって
 『お付き合い』に発展させんねん!!」

まだ高校一年の俺はあの人から見たら、子供にしか見れへんと思うけど
中身は大人やってことだんだん知ってもらうんや!!

「だから、頼むで!小泉。お前だけが頼りなんや」

「………やめといたほうがええと思うで。それにあんなんでも彼「ただいまーー」

あ、やっと帰ってきはった!
俺の耳に俺の大好きな人の声が聞こえて
俺はすぐに部屋から顔をだした。

「あ、お友達も来とったんや。いらっしゃーい」

「お邪魔してます。
 もうすぐ期末なんで、わからないところいろいろと隆斗くんに教えてもらってるんすよ」

「勉強って、えらいなー。せっかくの休みやのに」

よっしゃあー、ほめられた!!
これで俺のええとこポイントひとつゲットや。

「まぁ、将来のためでもありますから」

「へー、このころから将来のこと考えてんねや。すごいねー」

またまたほめられた!!
ほんならこっから将来の話に………

「お、俺…あ、僕、将来は教師になりたいんすよ。
 小学校の先生に。
 僕、こんなんでも意外と子供好きなんで」

「小学校の先生かぁ。めっちゃええ職業やと思うで。
 あ、勉強の邪魔したなぁ。ごめんな。
 ほな、またあとで差し入れもってくわ」

「あ、おかまいなく」

俺がそう言うと、あの人はかわいく笑って自分の部屋に入っていった。
俺は姿が見えなくなるまでずっと見つめていた。

それにしても………


またまたまたほめられてしまった!!
小学校の教師!なんてすばらしい職業なんや!
子供好き!これで三ポイントゲットや。

なんか、俺このまま『お付き合い』までいけそうやん!?

「おかまいなく」とは言ったものの、今すぐにでも来てほしい。
どないしよ。俺、今勉強なんか手につかへん。

「………」

さっきまで座っていたところに座りなおすと、
小泉はものすごく呆れたような顔で俺を見た。

「ん?どないしたん」

「先に言うとくわ。絶対にあれはやめた方がええ」

「なんで?」

「地獄におちる」

「は?」

「あと、姉ちゃんには……『ピーンポーン』

インターホンが鳴り、隣の部屋の小泉のお姉さんが玄関へと向かうのがわかった。
玄関では『いらっしゃーい、早かったな』とかなんとか
お友達?と話してる声が聞こえる。

「おじゃましますー。あ、誰か来てんの?」

「あー、隆斗の友達。期末の勉強やて」

「ふーん」

「あ、あたしお茶とか用意してくるから先に部屋行っといて」

「わかった」

俺の耳に入ってきたのはまさしく男の声。
しかも、部屋って!!
俺かて入ったことないねんで!!

「小泉!!誰なん?今の人!!」

「姉ちゃんの」

「姉ちゃんの!?」

「………彼氏」






☆じ・えんど☆



「嘘やろ?」

「ほんま」

「なんで早く教えてくれへんねん」

「本気って思わへんかったから」

「最初から本気やったちゅうねん!」

失恋。
ついさっきまでふわふわ浮いてた俺の気持ちが一気に地獄に落ちた。

あぁ、小泉の言うとったことはほんまやった。

今日はもうこれ以上勉強する気にならない。
俺は小泉にお邪魔しました、と一言言って部屋を出た。


なんという最悪なタイミング。

俺が部屋を出てすぐ

「「あ」」

「あ、大谷さん」

「隆斗くん。お邪魔します。ごめんな、勉強しとったんやろ?」

「いえ」

いつの間にか俺の後ろに立っていた小泉。
そして俺の目の前に立っている小さな男。
『大谷』というらしい。

俺はキッと男を睨み、その横を通り抜けて家を出た。

はぁ。カッコ悪。
告白する前にフラれてしもた。


あ、小泉んちに勉強道具おいてきた。
けど今から取りに行くのはきついな。

明日学校に持ってきてもらお。


ポケットの中から自分の携帯を取り出し、メールを打つ。


にしても、あの男背小さいやろ。あんなちっこい男に何ができんねん。
絶対俺のほうが………

ないか。


だいたい、あんなかわいい人に彼氏がおらんわけない。

背小さくてもそんなん気にならへんくらいええ人なんやろな。

俺、睨んでしもたわ。
やっぱ俺はまだ子供やな。


今から家帰って心の傷を癒してから、一人で反省会や。


〜End?〜

→あとがき+



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