過去編

□兄の手×兄の背×親の腕
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side:ロジ


バスの揺れに慣れてきたのか、ちびは手を握るイルミと会話をしていた。

『おにいちゃん』

「何?」

『おにいちゃんって、笑わないの?』

「笑うよ」

『じゃあ、笑って』

「あはは」

『笑って?』

「あははー」

『…………、笑って?』

「あはー」

『笑ってー?』

「ちび、もうやめてやれ……」

何だかイルミが可哀想だ。

「助かったよ、ロジ」

「どういたしまして」

舌足らずなだけで、ちびは普通に暮らす分の知識はあった。

『あと、どれくらいでつく?』

「バス下りたら、次は電車だな」

『ながいねー』

「ポチは寝てなよ」

何だかんだ言いつつ、イルミは兄貴として立ち回る。

「着いたら起こしてあげるよ?」

『へーきだよ』

物珍しそうに流れる景色を眺めては『あれは?』と、ひたすら質問責め。

「ポチって思ったより、しっかりしてるんだね」

「1人で生きてたくらいだしなー……」

きっとそれなりに苦労したのだろう。

『ひとりじゃなかったよ』

「そうなのか?」

『ねこちゃんがいた』

猫?

首を傾げると、イルミは「あぁ、なるほど」と頷いた。

「だからオレを猫と間違えたのか」

「何の話だ?」

そう聞けば、珍しくイルミが一から説明した。


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