魔法少女 リリカルなのは StS,EXV
□第四十七話「決意の拳」(前編)
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その言葉に、タカトは息を止め――次の瞬間、引き金は引かれた。
−弾−
待てとも言えなかった。ただ目の前で彼の頭が弾けた。それだけ、本当にそれだけで。
彼は死んだ。
負傷の具合を見るまでも無く即死である。
タカトは呆然と、もはや肉塊と化した男を見る事しか出来なかった。
やがて、彼を下ろす――悔しそうに呟いた。
「……勝ち逃げか、卑怯者め」
死んだ彼の口は、ただ嘲笑いの形のままであった。最後の最後まで彼はタカトを嘲笑い続けて死んだのだ。
それは間違いなく、タカトにとって負けであり、そして二度と勝てない。もう、彼は死んだのだから。
そう言えば名前も聞いていなかったなとタカトは一人ごちて、やがて提督に背を向けた。
「全次元世界の人類から全ての争いを無くす……? どう言う意味だ?」
もう答える存在はいない。それを分かっていながら問う。当然答えは返って来なかったが。
タカトは嘆息すると、近場の管制官を退かして端末を弄る。ウィンドウが展開した。
端末を操作し、艦のデータベースから情報を探る。しかし、ろくな情報は出なかった。
あるのは簡単な指令や、補給計画等々である。片っ端からファイルを開くがどれも似たようなものだけ。タカトは嘆息し、諦めようとして――妙なファイルを発見した。
一見なんてことは無いファイルに見えるが、これは……?
「一度、データが破棄されている? ……そうか、俺が来た時点で漏洩を避ける為に破棄したのか」
納得する。だが、それはつまり、データを復元しない事には見れないと言う事である。
そしてタカトには、まともな方法で破棄されたデータを復元する事もサルベージする事も出来なかった。
そう、”まともな方法ならば”。
タカトは端末から離れると、いきなり右腕を上げた。掌を中心にして幾何学模様の魔法陣が展開する。中央に浮かぶは666の紋章!
−煌−
虹色の光が帯状に魔法陣から飛び出す。それは迷い無く、端末へと突き刺さった。
情報、強制略奪完了。
データベースから各情報をサルベージ。復元、開始――。
この間、数秒足らず。
それだけでタカトは破棄されたデータを復元してのけた。『重要案件項目』と表示されたデータを展開する。
そこにはずらりと情報が並んでいた。
現在のストラ次元航行部隊の展開状況。
現状における占拠完了した管理内、外世界。
各、次元世界の侵略計画。
出るは出るは。管理局の人間ならば、口から手が出る程に欲しがりそうな情報がそこには並ぶ。しかし、当のタカトが欲っしていた情報はどこにも無かった。ストラの目的は分からず仕舞い。
結局、骨折り損か……。
今度こそは諦めてタカトは嘆息して、そのまま息を止めた。
「……なんだと?」
思わず問い掛け、展開した情報に視線を釘づけにされる。そこにはこう書いてあった。
『第一管理内世界、ミッドチルダ”殲滅”計画』
……そう、書いてあった。