魔法少女 リリカルなのは StS,EXV
□第四十二話「懐かしき我が家」(中編1)
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《トウヤ?》
タイミングぴったりにユウオから念話がブリーフィング・ルームに届く。彼はそんなタイミングの良さに苦笑しながら、口を開いた。
「ユウオ。なのは君の治療が終わったのかね?」
《うん。もうちょっとで終る所だよ。”女の子は”こっちに来る?》
「?」
なのはの事と言う事もあり、二人の会話を聞いていた一同だが、ユウオの台詞に疑問符を浮かべる。なんで女の子限定? と。そんな皆にシオンが苦笑する。
「……ナノ・リアクターは余分なモノを身につけ無いで入るからな。……ぶっちゃけると裸で入ってるんだよ」
「そうなんだ……」
シオンの言葉に、スバルが合点がいったのか感心したように頷く。他の皆も納得したのか頷いていた。
それらを見ながら、トウヤが微笑し、ユウオに返事を返す。
「ふむ、了解した。では、私が皆を案内するから――」
《あ、それはダメだよ。トウヤはそこに居て。確実に覗こうとするから》
問答無用に、ユウオはトウヤの台詞をぶった切る。それにトウヤは少しだけ硬直するが、すぐに立ち直った。
「いや、だが。お客を案内無しに――」
《そっちにカスミちゃんを向かわしたから問題無いね》
「……そこまで信用無いかね、私は……?」
まるで見透かしているかのように先手を打っていたユウオにトウヤが若干いじけたように呟くが、ユウオは一切容赦をしない。
《当たり前だよ――例えばボクがナノ・リアクターに入ってると、トウヤ、どうするの?》
「全力で覗くね! それはもう舐めるように! 網膜に焼き付けてくれよう!」
即座に拳を握って力説してのける! その姿に、アースラ一同は深くユウオに同意した。この男は女の敵だと。
「てな訳で、トウヤさんはここで残っててや?」
「――何故か、目が冷たいのだがね。八神君」
努めて優しく言うはやてだが、その視線は素晴らしく冷たい。……はやてだけで無く、女性陣全員だが。
間を置かずカスミが到着し、男達を置いてブリーフィング・ルームを出て行く。
立ち尽くすトウヤを見て、残されたシオン、エリオ、クロノは苦笑した。
「……まぁトウヤ兄ぃ、普段の行いが悪かったって事だよ。これに懲りたら――」
「ふ……。誰だね? それは?」
「――はい?」
いきなりのトウヤの言葉に、シオンは素っ頓狂な声を漏らす。だがトウヤは構わず、鉢巻きっぽい物を懐から取り出すと頭に巻き付けた。
「今の私はただ一人のエロ・コマンドー……断じて、トウヤなどと言う名前では無い!」
「て、ちょっと待て。待ったトウヤ兄ぃ、扉に近付くな!」
まさか……!
シオンを始めとして、クロノ、エリオも戦慄する。この男はまさか!
「このシチュエーション……! 覗かずば男にあらず!! 突撃ィィィィィィィィィィィ!!」
−撃!−
叫ぶなり、何とトウヤはブリーフィング・ルームの扉をピナカで破壊!
……恐らくは、外から施錠されていたのだろう――何にしても、破壊されては役に立たない訳だが――そのまま走り出す!
衝撃映像を見た三人は暫く硬直し、我に返ったと同時に頭を抱えた。
「あ、あのエロ兄貴ィィィィィィィ……!?」
「ちょっと待て……! 本気か彼は!?」
「流石に冗談じゃ無いんですか!?」
寧ろ、そうであって欲しいとクロノ、エリオの両名はシオンに叫ぶ。だが、シオンは重々しく首を振った。
「トウヤ兄ぃは、かつてグノーシス位階所有者女性陣、全員の着替えを覗いた事があります」
「「…………」」
「ちなみにそれがバレて女性陣に袋叩きにされた時の台詞は『反省も後悔もしてはいない! エロ万歳!』でした」
「追うぞ!」
シオンの言葉を聞いて、三人はトウヤを追い駆け出す!
ここにエロ暴走を繰り広げる第一位を止める為の戦いが、突如として勃発してしまった。