魔法少女 リリカルなのは StS,EXV
□第四十九話「約束は、儚く散って」(後編2)
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「あ〜〜もう! あのバカ、どこ行ったのよ!?」
『学院』に甲高い叫びが轟く。その叫びの主は他でもない、ティアナ・ランスターその人の叫びであった。
彼女の他に、スバルとギンガも心配そうに辺りを見渡す。しかし、どこにも彼の姿は無い。神庭シオンの姿は。
先程までは確実に居た筈なのだ。ティアナの作戦により、虫を撃滅した時までは。正確には、ティアナがスターライトブレイカーFSを叩き込む、その瞬間までは居た筈だ。
なのに、撃ち終わった時には既にシオンの姿は消えていた。
最初は巻き込んだかもしれないと、三人とも顔を青くしたものだが、冷静に考えると、あの時シオンは地面に下りていた。つまり、シオンが巻き込まれたのであれば、スバルやギンガも巻き込まれていなければおかしい。都合良くシオンだけが巻き込まれる訳が無いため、これは有り得なかった。
だが、なら何の為にシオンは消えたのか――ひょっとすると、拐われた可能性も無くは無いのだが。
シオンは何故か、ストラに狙われていた節がある。理由いかんは不明にしろ、ストラもそう簡単に諦めるとも思え無い。だが、あのシオンがそうそう簡単に誘拐されたりするだろうか? それだけは有り得そうに無かった。なら、後は。
《皆さん!》
「みもり?」
と、そこで念話が三人に来た。シオンの幼なじみにして、現在キャロに付き添っている姫野みもりから。だが、彼女からの念話が何故来るのか。それも、やけに切羽詰まった様子で。
ティアナは訝しみながらも、念話に答える。
「どうしたの? 慌てたような声を出して……キャロに何かあった?」
《いえ、キャロちゃんは大丈夫です。すやすや寝てます》
彼女が慌てる用件として、キャロに何かあったのかと思ったが、そうでは無いらしい。それには安堵を三人共浮かべ、ならと思う。ひょっとしたら、シオンがそこに居るのか。しかし彼女の返答は違うものであり、尚且つ三人共の顔色を変えるものであった。
《エリオ君いなくなってしまって……》
「っ――――! エリオ”も”!?」
《え……? ”も”ってどう言う事ですか?》
「こっちは、シオンが居なくなっちゃったんだよ……」
《ええ!?》
ティアナの代わりにスバルが答え、向こうでみもりが悲鳴を上げた。ティアナとギンガは頷き合う。
あの二人が同時に居なくなった。れに関連性を見出ださない方がおかしいだろう。あるいは、ひょっとして二人は――。
《見付けた!》
直後、更に別の方から念話が入る。他でも無い、ちび姉の愛称で久しい鉄納戸良子の声であった。彼女の台詞に、三人はすぐに飛び付く。
「見付かったんですか!?」
《ああ、シオンに――これは、エリオ・モンディアル君もか? 二人の反応が重なって検出された》
三人の声に、良子がおそらくは頷きながら返答してくれる。しかし、重なってとはどう言う事なのか。それを問う前に、良子から答えが来た。
《多分、シオンが彼を抱えて飛行魔法で飛んでいるんだ。かなりの速度である場所に向かっている》
確かに、それならば辻つまは合う。しかし、何故にシオンはエリオを抱えて何処かに飛んでいるのか……そこまでは、良子も分からないのだろう。答えは無い。
だから、ティアナはたった一つだけを彼女に聞く事にした。
「あのバカ達が目指してる場所は、何処ですか?」
《あくまでそれは、予測でしか無い。それでいいなら》
そこで一度言葉を良子は切り、そして暫くの間を挟んで答えを告げた。おそらくは、場所を正確に予測する為だろう。シオンの飛行経路を辿っているのだ。そして、その場所とは。
《英国首都、ロンドン。この国の中心だ》
沈まぬ太陽とまで謳われた国、イギリス。その町の中心、シティと呼ばれる場所にシオン達は向かっていると、そうとだけ良子は三人に告げた。