魔法少女 リリカルなのは StS,EXU

□第三十一話「グノーシス」(中編)
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 光が溢れる――シオンを中心として。相対していたアルセイオは息を飲み、そして、それを見た。
 炎を纏う右のイクスを、風を纏う左のイクスを、そして。

「……精霊、融合」

 雷を纏い、膨大な魔力を放出するシオンを。
 すっとシオンは閉じていた目を開く。同時に構えた。
 右のイクスを上に、下に左のイクスを持ってくる。背の6枚の剣翼が展開した。

「神庭シオン」
「っ……!」

 声に引きずられるようにアルセイオはダインスレイフを構える。シオンはそれを見遣りながらぽつりと呟いた――。

「推して、参る」

 ――宣戦を。

 次の瞬間、アルセイオはシオンの姿を見失った。
 シオンが居た位置にあるのは雷光の残滓のみ。

「っっ!? ちぃ!」

    −戟!−

 アルセイオは殆ど勘任せに真後ろにダインスレイフを突き出す。そこにシオンは居た。
 右、短槍のイクスを突き出しダインスレイフと鍔ぜり合っている。肩越しにシオンを見ながら、アルセイオは胸中驚愕の叫びを上げていた。

 ……何も、見え無かったぞ!?

 冷や汗が頬を伝う。体温が二度程下がった気がした。

「神覇、陸ノ太刀」
「っ……!」

 ぽつりと呟かれるその言葉にアルセイオは反射的に瞬動で後ろに下がる。だが。

「な……!」

 ――動かない。否、距離が離れない。シオンとの距離が。
 アルセイオはしばし呆然とし、直後に気付いた。シオンはアルセイオに合わせて距離を詰めたのだ。
 ”アルセイオの方が早く瞬動を掛けたと言うのに!”
 シオンはアルセイオの動揺に構わない。一歩を踏み込み、右のイクスを突き出す!
 アルセイオは無意識に空いていた右手を突き出した。同時に爆炎が吹き出し、シオンを中心に不死鳥が産まれる!

「奥義、朱雀!」

    −煌−

 神覇陸ノ太刀、朱雀――シオンを中心にして生まれた不死鳥は、至近距離でアルセイオに襲い掛かり、その身体を飲み込んだ。

    −爆!−

 裂光轟炎!
 朱雀はその威力を完全にアルセイオに叩き込み、身体を真上に突き上げた。

「ぐっ、う! 野郎――!」

 真上に吹き飛ばされながらアルセイオは口から悪態を漏らす。正直、危なかった。
 直撃の瞬間に、無理矢理に形成した巨剣を叩きつけ、僅かとは言え威力を削いだからよかったものの、それが成功しなければシールドごと消し炭になる所だったのだ。凄まじい威力である
 アルセイオは息を飲みながら飛ぶ方向に足場を形成。それを踏み、体勢を整える。

「坊主は――」

 居た、”目の前に”。

「漆ノ太刀」
「――!?」

 ――早過ぎるだろ!

 そう叫び声を上げたいが、そんな暇は無い。アルセイオは無理矢理にプロテクションを発動する。
 だが、シオンは構わない。左――長剣のイクスを振るう。同時にその身体は風を纏い、白き虎へと変身を遂げた。

「白虎」

    −戟−

 −戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟・戟−

    −戟!−

 数十、数百、数千、数万!

 超高速の全周囲斬撃がアルセイオを襲う!
 プロテクションは数秒しか持たなかった。パリンと硝子を割るような音が響き、そして。

「く……っ!」

    −哮!−

 暴虐たる虎の牙がアルセイオへと容赦無く叩き込まれたのだった。

 
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