魔法少女 リリカルなのは StS,EXU
□第三十話「反逆せしもの」(後編)
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ミッドチルダ首都、クラナガン。そこで、悲鳴が上がる。
悲鳴の主は少女であった。彼女は顔を真っ青にして必死に走る。それを追うのはヒトガタだ。
よだれを垂らしながら少女を追う。避難勧告や転送ポートによる避難はあった筈だが、少女は逃げ遅れたのだろう。
走る、走る――それでも振り切れない。それどころか、距離をドンドン詰められている。さらに言うと数が増えていた。もう、どのくらい居るのか、わからない程の数になっている。
その半分が”何か”を食べた証に口元に赤い何かがべったりくっついている。
なんで……なんで!?
少女は心の中で叫ぶ。何故こうなったのか、と。
昨日までは普通だったでは無いか。退屈だが、普通の日々。なのに、何故こうなったのか。
なぜ、なぜ、なぜなぜ――なぜ!?
「っ……!?」
次の瞬間、少女は悲鳴を上げて地面に転がった。
急に履いていたローファーが裂けたのである。ヒトガタから伸びた、指の一閃によって。
「っ……ぁ、何で……!?」
早く起き上がらなくては。
そう思い。しかし、上手く立てない。十数分間全力で走り続けていたせいで、体力は既に限界だった。
「いやぁ、やだぁ……!」
それでも逃げようと腕だけで少女は前に向かう。
だが、それを嘲笑うかのように、数多のヒトガタが少女の周囲を囲んだ。
「やだ……! やだ……!」
涙を流して嫌々をするように少女は首を振る。ヒトガタはそれにニィと笑い――そして。
一斉にバクンと口を開いた。
「っ――――!」
少女は声にならない悲鳴を上げた。もう、ダメだと、目をきつく閉じる。
一秒、来ない。
二秒……まだ来ない。
三秒――何も来ない。
流石におかしいと少女は思い、そぉっと目を開く。そこには。
――剣。
−剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣・剣−
−剣!−
無数の剣の群れが、地面に突き立っていた。ヒトガタの姿はどこにも無い。居なくなっていた。
−ソードメイカー・ラハブ−
直後、少女は声を聞く。音を一切介さない、声を。
そして少女は見た。振り落ちる剣の群れ達を。
千ではきくまい。何せ、自分が見る空いっぱいに剣があるのだから。
そして剣群達は、一時の間をもって、全て。
真っ直ぐに、振り落ちて来た。