魔法少女 リリカルなのはStS,EX
□第八話「精霊融合」
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時空管理局、管理内世界第三十世界。緑豊かな惑星が多数並ぶ世界である。その星の一つに、異形のオーガが立っていた。
体中から黒い因子を溢れさせる彼等の思考はただ、喰らい、壊し、潰す事。ただそれだけしかない。いや、正確にはそれしか遺ってない、と言うべきか。
そんな異形を前にして声が響いた。朗々とした声が。
「あんまり期待しちゃいねぇが……。一応、聞くのが俺の義務でな」
異形に声が届く。だが、恐らく何を言われてるのか理解する事はないだろう。それでも声は続けた。
「ナンバー・オブ・ザ・ビーストを知ってるか?」
声の主、神庭シオンは自らの所持デバイスであるイクスを肩に担いで問うた。その問いに対する異形は、ただ一つの返答を返す。
「RUGaaaaa――――――!」
咆哮。それのみをただ異形は返した。
「やっぱ駄目か」
そんな異形にシオンはげんなりとする。案の定と言うべきか。異形――この感染者に理性など期待出来なかった。
「えっと、シオン兄さん、もうあんまり時間掛けないほうが……」
先程の会話からシオンの事をキャロ共ども、『兄さん』と呼ぶようになったエリオが、遠慮気味に言う。シオンは確かに、と呟いた。
「んじゃ一丁やるか。キャロ、補助頼む。エリオ、援護よろしくな」
「「はい!」」
シオンの指示に、二人揃って頷いた。感染者との戦闘経験は、シオン以外にはスバルしかない。故に二人共、シオンの指示で動く事にしたのだ。
「基本的に致命傷を与えてもすぐに復活するから攻撃は一切緩めるな。例え半身潰してもお構いなく攻撃しかけて来やがるからな」
その言葉に二人共再び頷くのを、シオンは確認する。その中で、素直な子達だなと、改めて思った。
一瞬だけ目を閉じ、過去の自分を思い出した――苦笑する。だが、すぐにその顔は切れ味のある真顔に戻った。
「よし、行くぞ!」
「「はい!」」
そして、シオンとエリオは異形へと一気に飛び込み、キャロは二人を補助すべく永唱を開始した。