魔法少女 リリカルなのはStS,EX
□第三話「刃と拳」
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時空管理局、ミッドチルダ地上本部。
かつてジェイル・スカリエッティの引き起こした事件により、無惨にも破壊された場所である。
だがあの事件より一年が経ち、地上本部は見事に再建されていた。
その地上本部の会議室の一室に元機動六課の面々、そして。クロノ・ハラオウン提督。リンディ・ハラオウン総務統括官。そして、無限書庫の司書長のユーノ・スクライアにくわえ、スバルの父親のゲンヤ・ナカジマ三等陸佐、そしてスバルの姉のギンガ・ナカジマ陸曹が集まっていた。
スバル・ナカジマが強襲された一件。
その直後に事件の詳細を聞こうと、集まったのである。
「スバルは……大丈夫なんですか?」
心配そうな顔でギンガが問う。連絡が来た時は不安で仕方なかったろうのだろう。
それを聞いて、ゲンヤは落ち着かせるように、ギンガの頭に手を置いた。
「落ち着けギンガ。八神、スバルには特にケガはなかったんだろ?」
「はい。でも今は念の為、医務室に検査に行って貰ってます」
問いに、うなだれるようにしてはやてが答える。
自分達の目と鼻の先で、スバルは襲われたのだ。
報告を聞いた時は血の気が引いたものである。ゲンヤには申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
そんなはやて達を慮ってか、ゲンヤは苦笑して手を振った。
「気にすんな。スバルもそう思ってるだろ」
あっさりと言う。しかし、それでも謝りたかった。
スバルが襲われたその時、知らなかったとはいえ、自分達は宴会をしていたのだ。
「あ……」
扉が開く。検査を受けていたスバルとティア、そして検査を手伝っていたのだろう。シャマルが二人に付き添っていた。
「スバル、ティアナ……!」
なのは、ギンガを始めとして、皆が一気に集まる。それを見て、二人は申し訳無さそうな罰の悪い顔を浮かべた。
「はい、すみません。お騒がせして」
「そんな事、ないよ。大丈夫だった? どこもケガとかない?」
なのはが尋ねる。かつて、なのははスバルと似たような状況で大怪我を負った事があるのだ。心配もひとしおだった。
「シャマル?」
「はい」
はやてに促され、シャマルが前に出る。検査の結果を聞く為だ。
「スバルちゃん、ティアナちゃん。共にケガなしですよ♪」
「そか〜〜」
シャマルの言葉を聞いて、はやてを始めとした皆は一気に息を吐く。ようやく安心した為だ。
「本当、申し訳ありませんでした」
そんな一同に、ティアナが頭を下げる。
スバルもそれに倣って頭を下げた。そこまで、心配させてしまったと。そう思いながら。
「そんな、頭を上げて」
頭を下げる二人に、フェイトが慌てる。謝りたいのは自分達なのだ。これではあべこべであった。はやてもフェイトに頷く。
「いや、謝るんはこっちや。ゴメンな。スバル、ティアナ」
「うん、ゴメンね」
はやてを始めとして、皆が一斉に頭を下げる。これには二人も流石にたじろいだ。
「え……そ、そんな!? 頭を上げて下さい!」
「そ、そうですよ! ほら、ケガも無くて、ぴんぴんしてますし!」
慌てたのはスバルとティアナだ。皆、全然悪くなんてないのに、謝られては申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまう。
「ううん、そんな事ない。二人共、大変な時に私達はお酒なんて飲んで……」
なのはがそう言った途端。「あうっ!」と、シャマルが胸を押さえながら後ずさった。
……ちなみに、最初にお酒を飲ませたのはシャマルである。
「うむ……酒には飲まれるな。とは言うが今回はそれを痛感した。いつの間にか注がれたとは言え。弁解も出来ん」
シグナムも続くと、さらにシャマルが「あうっ! あうっ!」とダメージを受けていく。勿論、精神的な意味で。
「だね。元々なのはも私もお酒、得意じゃないし……いくら、シャマルが旅の扉まで使って注いだって言っても。気付けなかった私達も悪いし」
フェイトも続く。シャマルは「あうぅ……!。あうぅ……!」と悶えていた。
「そやね。約一名。妙に腹黒いんを忘れてもうたんが失敗やった。ウチの子の教育も含めて、ホンマ、ゴメンな〜〜」
はやてが止めをさす。ついに、シャマルは泣き崩れた。