ありきたりな恋歌
□第二場面
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次の日の朝。
ぼんやりと、目の前を見つめる。顔のすぐ横に、枕、見えるのは、自分の部屋。起き抜けの私はぼんやりとベッドから起き上がった。
身体が、重い。
妙にベッドが恋しくなって、私はまたベッドに寝転ぶ。
(いや、駄目……。起きなきゃ)
私はもう一度ベッドから身体を起こし、洗面所に顔を洗いに行った。
身支度も終わり、目も覚めたところで私は慶治くんの部屋に向かった。
「慶治くーん。起きてますか?」
ドアを叩き、部屋からの物音に耳をそばだてる。
「慶治くん?」
物音がしない。返事がない。私は部屋に突入することにした。
「慶治くーん! 朝です。七時です。起きてますよねえ?」
ばっと扉を開けると、客用の布団の中に寝惚けた顔の慶治くんがいた。因みに客用布団は家具の中に混ざっていたものである。
「慶治くん、駄目じゃないですか。もう七時です、起きないと」
私は何となく慶治くんの布団に飛び込んだ。
「え……? うわ、スーちゃん?」
布団越しに慶治くんに馬乗りになる。
布団と触れた太ももが熱い。でも、なんだか布団がいつも以上に恋しい。
「『うわ』、なんてひどいです。慶治くん、もう朝です。起きましょう」
言葉とは裏腹に私の身体は布団を求めていて、馬乗りでは飽き足らず、慶治くんに覆いかぶさるようにして寝転んでしまった。
「え。え? え! ちょっとスーちゃん! なんで僕の上にいるの!」
「起こしに来たんですよー」
(でも、なんだか疲れた……)
私はのっそりと起き上がり、慶治くんの布団を剥いだ。
「わ、わかった。起きる起きる起きる!」
何故か慶治くんの顔が赤くなっている。従妹に起こされるなんて照れ臭いのだろうか。
でも、私は起きるという慶治くんの言葉を不満に思ってしまう。
(なんか、起きるのやだなあ)
「やっぱり、起きなくていいです」
私は剥いだ布団をまた掛けることにする。今度は、布団の下に自分の体を押し込んで。
「わ、ああああ! なんで入ってくるの! 起きるから、起きるから!」
布団の中は、暑い。でも、身体を横にすると随分気持ち良かった。薄い布越しの慶治くんの肌は熱いほどだったけれど、人肌も気持ち良い。
「慶治くん、起きなくていいです。一緒に、寝ましょう?」
布団の中に一人増えたせいで、とても暑い。そのせいで慶治くんの顔は真っ赤だ。私も赤くなっているかもしれない。
「え、えええええ! え! そうなの!? いや、駄目だよ!?」
顔が赤い慶治くん。何が駄目なんだろう。
「慶治くん、五月蠅い……」
慶治くんの声が頭に響く。痛いほどだ。私は慶治くんの胸に顔をうずめる。手を回し、ぎゅっと力を込めた。
「お願いです」