小説

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折角外にいるんだし、買い物でもしてから帰ろう。


そう思い、携帯をポケットから取りだして
家の主である晴香に電話をかける。



だが。




「………………繋がらない、か」




ミーンミーン。

溜め息混じりに言った言葉は、大きな蝉の鳴き声にかき消されてしまう。


仕方がないから帰るしかないな。


そう思うが早く、ベンチに置いておいた鞄を持ち

ストリートバスケを後にした。











【あの暑い夏の日の想い出】















異世界から来た僕を拒まずに受け入れ、
そして生活に必要なものを買ってくれた。

それらの借りを早く返したい。


だから、買い出しに行ってやろうと思った。



借りをつくっておくのが嫌だ。



それもあるけど、もう1つ何かが絡んでいるらしい。


よく分からない何かについて考えていると、

僕の世界では有名な人物を視界に捉えた。




「お前は……!」


「は? 誰だよ、お前」




そいつは、

無冠の五将の1人──花宮真だった。



そうか。
こちらの世界の奴等は僕のことを知らないのか。


晴香に出会ったときに

キセキの世代も無敵の五将もこの世界にはいない

と聞いたことを思い出す。



だから、もしかしたらこいつも

バスケをやっていないかもしれない。


そう考え込んでいると、花宮真は口を開いた。




「もしかしてさぁ。松並の知り合い?」


「晴香のことを知ってるのか?」


「へぇ、名前呼び。ああ、あの置き手紙の子だったりすんの?」





ニヤリ。

そんな不気味な笑い方は、こちらでも変わっていないようだ。




「そうだったら………?」


「簡単な話だろ。恨み続けるね、一生




そう吐き捨て去っていく。



花宮真は晴香のことが好きらしい。



そうと分かっても、僕には関係のない話。


なのにどうしてだろう。


僕は無性に腹が経った。

自分のおもちゃを取られたみたいに。










家に着くと、リビングには顔を赤くした晴香が呆然と立っていた。



花宮真に何かやられたのか。



それだけで、黒くどろどろとしたものが心の中で蠢く。




「さっき僕、電話したんだけど」


『……電話? あ、あれ赤司くんからだったの!?』


「そうだよ。次はちゃんと出ろ」


『は、はいっ!』




1分にも満たない会話をしただけなのに、僕の心の中のおぞましい何かはなくなっていた。


自分のおもちゃが手元に戻ってきたような。
そんな感じがして。


緩みそうになる口元を悟られないように、命令を出す。




「お腹減ったから、早く昼御飯作って」




急いでご飯を作りにいく晴香が、少し愛らしく感じた。







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足跡1965ありがとうございます!
これからもよろしくお願いします。


足跡965の赤司くん視点です。
赤司くん、花宮が誰だよ状態ですね。
本当に申し訳ないです……

赤司くんはヒロインにまだ恋愛感情はありません(多分)。
ただ自分の所有物(?)が他人に遊ばれた気がして腹を立てているだけです(多分)。



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