小説

□965
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『なんでここにいるんですか? 今すぐ帰ってください』


「ひでぇ。折角、先輩が来てやったのに」




補習が終わり家に着くと、そこには中学時代の顔見知りがいた。

委員会が2年間一緒で
担当の曜日が同じだった。


それを期に絡んできたけど、本当に嫌な思い出ばかりだ。

いや、
良い思い出など1つもない気がする。




『貴方を先輩だとは思ったことありませんよ、花宮』



多分、今の私は苦虫を潰したような顔をしているんだろうな。










【あの暑い夏の日の想い出】















家の鍵は閉まっていて、赤司くんは外出中のようだった。


リビングに入ると机には

“ストリートバスケに行ってくる”

とだけ書かれた置き手紙。



そう言えば、買い物に行ったときに場所教えたっけ?



記憶を辿っていると

後ろから手が伸びてきて、手紙をとった。




「松並、男でも出来たわけ?」




ふぅん、と空いている手を顎にあて、面白くなさそうに笑う。


私はこの顔がどうも苦手だ。



なんというか

怖い。



それもつかの間で

紙を机に戻すとそのまま私の胸ぐらを掴んだ。


そして首筋に顔を近づけ、そこに舌を這わす。




『っ、ちょ……やめてください!』




ゾクゾクと気持ち悪い何かが、身体の中を駆け巡った。



ああ、吐き気がする。



そんな嫌そうにしている私を見てから、満足そうにゆっくりと顔を離した。





「ふはっ、面白ぇ」


『……………全く面白くありませんよ、花宮』




こいつを例えるなら正しく

悪童。



これほどたちの悪い人間はこの世にいないね。


……あ、今吉先輩がいるか。



とにかくこの2人は性格が悪い。

赤司くんはまた違った意味で悪いけど。



やれやれ。

小さく溜め息を吐くと、
花宮は掴んでいた胸ぐらをようやく離した。


制服がちょっとシワになったじゃんか。


心の中でブツブツと文句を言ってやる。

頭のよろしい花宮は、そんなことも分かってるんだろうな。



なんて思っていると携帯が鳴る。

取り出そうと鞄に手をかけた時、花宮は口を開いた。




「松並がうっせーから、今日のところは大人しく帰る」




吃驚して手を止める。


あの花宮が、素直に帰ってくれるとは思ってもいなかったからだ。



え、何?
今日、地球が滅亡しちゃうんじゃ……




「とでも言うと思ったか? バァカ」




そうですよね。
貴方様はそういうお人ですもんね。


呆れていると、あの人を嘲笑うようなふはっという笑い声をあげる。


そして、またも胸ぐらをぐいと掴んだ。

でも先程と違うのは、次に来た衝撃が首ではなく

唇のすぐ横ということ。




『!!!!!! な、なにを……っ!』




チュというリップ音をあげ、花宮の顔が離れた。



いきなりのことに頭をぐるぐるさせていると

気付いたら花宮はいなくなっていた。



いったいなんなの!



どくどくと頬が熱い。

それは赤司くんが帰ってくるまで、おさまらなかった。







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足跡965ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。

花宮が好きなんです。
でも口調が全く分からないです。
偽者すいません……



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