小説
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『貴方の来た世界とこの世界は少なからずリンクしている。だから元の世界に帰る手がかりは、リンクしている何かから探すしかないんじゃないかな?』
「思ったより君が馬鹿じゃないみたいで安心したよ」
自分なりに今までの出来事を整理して、簡潔に纏めて、彼に伝えるとお互い考えていることが同じことが判明した。
ただ最後に皮肉を言われたことが引っ掛かるけど、つっこむのはやめておこう。
【あの暑い夏の日の想い出 3】
現在4時20分。
あれから1時間が経ったが、らちが明かないので
家の中を一通り案内してから
(広くはないからすぐ終わった)
リビングのソファーに座ってもらった。
本当に両親がいなくて良かったことを初めて感謝した気がする。
ちなみに彼とは同い年ということで、すぐに打ち解けられた(と思う)。
実際、同い年と分かったときは、これでもかっていうくらい叫んだ。
(その後、全力で土下座をさせてもらった)
いやまじで。
あんな目の据わっている同い年は、日本中どこ探してもいないって。
未だに信じられない。
まあ今はそれは置いといて、彼の話に集中する。
「帰るために手掛かりを集めなければならないが異世界から来たから僕に帰る家はない」
今さら何当たり前のこと言って……
すいませんすいません。
だからこっちを睨むのは
まじ勘弁してください。
心の中で全力で土下座。
それを知ってか知らないか彼は大きな溜め息を付き、再度私を見る。
こちらをじっと見るその瞳が何を物語っているか。
馬鹿な私でも分かった。
『……この事情を知っているのは私だけだし、両親もしばらく帰ってこないし。私の部屋以外なら自由に使ってどうぞ』
言い終えると彼の口許は弧を描いた。
不敵な笑み。
でも何故だろう。
不思議と怖くはない。
むしろもっと見ていたい気持ちにかられる。
心が温かい。
だがそんな気分はすぐに吹き飛んだ。
「聞き分けが良い奴は嫌いじゃないよ。僕は赤司征十郎だ。帰る方法が分かるまでよろしく頼むよ、晴香」
そう言って手を差し出されるので、おずおずと握手を交わす。
心は冷たいけど手は温かいんだ。
……じゃなくてなんすか。
聞き分けって。
確かに良い方ではないと思うよ。
だから両親も置き手紙を残して行っちゃったんだと思う。
でもさ本人に言わなくてよくない?
なんか凄く悲しいんだけど。
しかも。
『いきなり下の名前で呼ぶ? 普通』
小学校以来だよ。
家族や親戚以外の男性に名前で呼ばれるのは。
「僕は認めた相手は名前で呼ぶ主義だ」
へーそうですか。
私には赤司くんの基準が全く分からないのだった。
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名前で呼ばれたい。
切実に←
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