小説

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夏休み3日目。


今日も何事もなく夜を迎えることができて

(まだ両親とは連絡ついてないけど)

気持ちよく眠っていた。








はずだった。





『ぐへっ!』



いきなり私を襲ったのは、重い何かが落ちてきたような衝撃。




……え?
いや、は?


目を開けて状況を確認しようとするが、暗くて見えない。



夢だったのかな。



いつもの私ならそう思って終わりなのだが、お腹に何か乗っていることに気付いてしまったので

(しかもかなり重い)

先程の衝撃は夢じゃないらしい。



多分、地震が起きて物が落ちてきたんだ。
きっとそうだ。



そう思い、どかせようした瞬間。




「痛……」













………………うん?

人間?


しかも、





男じゃん………!




声を聞き、初めて私の体に乗っているものが分かった。


そしてすぐに心を支配したのは

“恐怖”。




泥棒だったら

(普通は泥棒しか考えられないけど)

殺されるかもしれない。




そう思った私は、無我夢中で枕元にあった目覚まし時計を暗闇の中ゆらりと蠢く影に思いきり投げつけた。










【あの暑い夏の日の想い出 1】















『すいません。投げ付けておいてあれですが、殺さないでください!私を殺しても何一ついいことありませんから!』




ガンと鈍い音が静かな部屋に響いた後、私は全力で謝った。


これで私の長いようで短い人生は終わってしまうのか。



Good-byeこの世の私。
Helloあの世の私。

向こうではせめて彼氏が出来ますように。




「ふざけたことを言っている暇があるなら、今すぐ電気をつけろ」


『……………………え?』




男はそう言いながら、私の上から退いた。



まだお腹は痛い。

だが、それよりも。




今、心の中読んだよね?

なんですか。なんなんですか。
あ、読心術ですか。

うわ、なんか厨二くさ…



「早くしろ」

『はいただいま!』




先程より低く強い声で命令をしたので、私は逆らうことなどできず

(元々逆らってはいないけど)

大人しく電気をつけることにした。










カチ…

音に少し遅れて部屋がぱっと明るくなると同時に、私はいち早く男の姿を瞳に捉えた。



炎のような赤い髪。
琥珀と深紅色のビー玉のように綺麗なオッドアイの瞳。

整いすぎている顔はこの世のものじゃないような錯覚に陥った。



しばらく見惚れていると


「ねぇ」


と声をかけられ意識を現実に引き戻されると、自然に体が震え始める。



下を向き、汗ばんだ手をきつく握り締め言葉を待つが、男は中々口を開かない。


不思議に思い顔をあげると、がっちりと目線があった。




『あ、あああのすみませ…』

「君は誰? そしてここはどこ?」




遮られた謝罪の言葉の変わりに、考えてもいなかった言葉を言われる。



驚いて目を白黒させていると

「早くしろ」

と鋭い目が物語っているような気がしたので、おもむろに口を開いた。




『ええと……私は松並晴香で、ここは私の部屋です』




簡潔に、そして真実を喋っただけなのに何故か睨まれた。



“蛇に睨まれた蛙”。



まさにその様な状態の私は、鋭い瞳にビクビクしながらも必死に考える。


そして、男が聞きたいと思われる答をなんとか思いついた。




『ここは東京都の誠凛高校の近くですよ』




すると男は目を見開き、私に近づく。


そして首に手をかけた。




「本当のことを言わないと殺す」




そう言う男の瞳は本気で、

私は本当に殺されてしまうかもしれない。




手に少しかかった圧力が、喉を圧迫する。






苦しい。




彼が何に驚いたのかは分からないけど、
これだけは変えられない事実。


それに自分を偽るのは嫌だし、

嘘はつきたくない。



だから私は。





『ふざけているつもりはありません。先程の話は全て本当で、ここは間違いなく東京です。信じてください』





しっかりと目を見て怯むことなく言い切りスッキリしたが、これで私は殺されるのかと思うと気分は重い。



また喉が少し圧迫され、これから起きることが怖く


ぎゅっと目を閉じた。







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まじトリップしてこいや
って思います。



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