小説

□S.A
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『ふざけているつもりはありません。先程の話は全て本当でここは間違いなく東京です。信じてください』




そう言う君の瞳は本気で。


僕が力を入れれば、

簡単に締め殺されてしまうというのに。



この子は相当なアホだろう。




でもそんな君だったから、


この馬鹿げた話を信じてみようと思えた。










【あの暑い夏の日の想い出 3.5】















今日から夏休みで、久し振りの1日練習。

だから家に着く頃には、柄にもなく疲れていた。


玄関を開け、もう外には出ないので鍵は閉め
真っ先に向かったのは風呂。


衣類を脱いで洗濯機に放り込み、

手早くシャワーを済ませてからジャージに着替えた。



いつもはこの後ソファーで涼んでからご飯を作るのだが
今日は体が鉛のように重くて、ソファーを動きたくない。



ご飯は後ででもいいか。


そう思い僕は瞼を閉じた。










どれくらい眠っていたのだろうか。



いきなり感じた痛みと衝撃に目を開けた。

そして暗闇で何も見えないが、感触からベッドの上らしいことが判明。




だが、

この布団は僕の家のものではない。


触り心地が違った。



本当にここはどこだ?



今までの過程を遡っていると
頭に思いきり、硬い何かを投げつけられた。

(かなり痛かった)




『すいません。投げ付けておいてあれですが殺さないでください!私を殺してもいいことありませんから!』




突然下から聞こえる女の声。





僕は何をやらかした。


覚えのない出来事に驚いたが



まあいい。


こいつが全てを知っているだろう。

脅して聞き出せば問題ない。


それよりも。




「ふざけたことを言っている暇があるなら今すぐ電気をつけろ」




すると、女は間抜けな声を上げた。

殺されると思っていたに違いない。


この状況を利用して

「早くしろ」

と低い声で命令すると、やはり怖いのかすぐに電気がつく。



そこには、どこにでもいるような

(顔もスタイルも普通)

高校生ほどの女がジャージ姿で立っていて、
こちらをビクビクしながら見ていた。



弱者の分類に入るだろうこいつ。



僕は弱者に興味はない。


だから下手なことを言ったら、本当に殺してしまおう。

そう思っていた。










だけど実際は違った。




『ふざけているつもりはありません。先程の話は全て本当でここは間違いなく東京です。信じてください』




この言葉が僕の中でリピートする。


君はただの弱者とは違い、
きちんと自分の意思を持っているらしい。


そして僕はそこに興味を持った。


だから君を認めてあげる。




「聞き分けが良い奴は嫌いじゃないよ。僕は赤司征十郎だ。帰る方法が分かるまでよろしく頼むよ、晴香」




そう言って手を差し出した。






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1〜3をひっくるめた赤司くん視点。
なんか謝りたいので謝ります。
本当にすみませんでした!



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