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□雪の日
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しんしんと雪が降り続ける真冬の日。
寒いから出かけたくないという要の意見に大賛成して、DVD鑑賞をすることになった。

この前のクリスマスのDVD鑑賞会では、推理ものを借りて来て千鶴が「今のどういうこと?ねぇ!」と、いちいちうるさくて見ていられなかったので、今日はまた違う推理ものをふたりで見ることにした。

DVDをデッキにセットした要が、私の隣に並んで腰掛けるとソファがギシリと沈む。

足を組んで、私の膝の上にあるお菓子の袋からキャラメルポップコーンを鷲掴みにして口に放り込む要。

なんて豪快な…と半ば呆れた視線を向けた。
それに気づいて、あんだよ、と睨んでくる要はシカトだ。

流れる予告編をすっ飛ばし、たぶんわずかに本編に食い込んで再生される。


『あ、ちょっと。ちゃんとはじめから見たい。戻してよ』


要がイラっとした様子で見てくる。

すいませんね、細かくて。
最初から最後までキッチリ見ないと気が済まないんです。
映画館でエンドロールの最中に帰る人ありえません。
私はちゃんと最後まで見届けます。

めんどくせーとか細かいとか、なんだかんだ言ってちゃんと戻してくれる要。

再生されたら終わるまで、私たちは無言だ。

…の、はずだ。
私は全然集中できずにそわそわしていた。

なぜなら。
この隣の男が私の手を握ってきたから。

しかも、なにこいつスカしてんの?
いつもなら手繋ぐのだって照れまくる男が、なんで平然と映画に集中してんの。

誰だこいつ誰だ。

信じられなくてマジマジと要の横顔を眺めた。

あ、暑くなってきた。
いくら私が冷え性でも暖房ききすぎですよ。要くん。
手のひらにまで汗かいてきたよ。

私の送る視線に気づいたのか、要がふとこちらを見た。


「……ー!!」


バッと勢いよく握っていた手を離す要に、え?って顔の私。

要の顔が一瞬で真っ赤に染まり、焦りまくっている様子が伺える。

…無意識でやってたわけですか。
ははーん…動揺して損した。


「こ、これは…!あれだ、その、お前の手が冷たいから、無意識にっ!」


何を言い訳してるんだろう、この人は…
彼氏彼女が手を握るのにも理由が必要なのか。

とりあえず、私を動揺させた罪は重いですよ。


『要』


そっと要の真っ赤に染まった耳元に、ふっと息を吹きかけるように口を近づけて


『あとでたくさん、しようね』


語尾にハートマークでもついてるように可愛く囁けば、要はソファーの端っこまで一気に遠ざかる。

そして「…お前もう嫌だ…」と片手で顔を隠して、小さく死にそうな声を出した。

要のそういうとこ、ホント可愛いよね。(ドS)
要が悪いよ。
要のくせに私を動揺させたんだから。

テレビの大画面に気づくと主人公の探偵が、犯人はお前だ!と指を突き立てていた。

あ…

ろくに見ていなかったのに、犯人はバッチリ見てしまった私と要は目を見合わせて笑った。


『次何見よっか』

「あ?あーあれは、アクションなんとか…」

『えー、あれ上下巻の超大作じゃん…』

「じゃあなんで借りたんだよ!」

『そんなの、面白そうだったからに決まってるでしょ』

「………」





*雪の日*end

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