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□仔猫の恋
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高校生になる少し手前の春休み、仔猫同士がじゃれ合うようにキスをした。
あたしにとって、それは自然の流れだったと思う。

あたしはずっと、お隣に住んでいる双子の弟の方が好きだった。

ダラダラと寝転がりながら、愛読書アニメージャをペラリとめくる祐希を眺める。

いつもながらに、あたしはコイツのどこが好きなんだろう、と疑問に思う。

だらしないし、マンガとアニメ大好きっ子なヲタクだし、興味ないことには完全無視だし、やる気ないし。


「…なに?」


いつの間にか無意識の内に祐希の背中にのしかかっていたあたし。
横目に見てくる祐希にハッとする。


『い、や、なんでもっ』

祐希の背中を親指で押したりなんかして、マッサージ?とごまかした。

これだよ、あたし。
あたしは無意識に祐希にくっつく癖があった。

なんでこれが兄の方じゃなかったのか…こんなグータラと違ってしっかりしてるし、面倒見もいいし、甘やかしてくれるだろう。

祐希の背中に跨ったまま、その柔らかそうな髪に自分の鼻をグリグリ埋めた。

あーくそー…いい匂いすんだよなコイツの髪の毛…
なんの匂い?シャンプー?


「あの、耳元でそんなハァハァ言わないでください…」

『はっ!!あ!ごめんごめん!』


あはは、と頭を上げて笑うあたしを、祐希が鼻で笑った。

カチンとくるけど、やっぱりあたしはこれが一番落ち着く。

見た目より広い背中に抱きついて、後ろから祐希のほっぺたに鼻を擦り付ける。
祐希の背中にほっぺたを押し付けて目を閉じた。





ずっと勉強机に向かっていた悠太が、静かになった沙奈と祐希の方を向く。

この2人は…まるで悠太の存在を忘れているかのようにイチャイチャ…

でも悠太は、絨毯の上に寝転んだふたりの幼い寝顔に表情をゆるめるのでした。




*仔猫の恋*end

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