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□境界線上の彼女
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恋人、というより友達。
友達、というより幼なじみ。
幼なじみ、という腐れ縁でつながった彼女。


「恋人ってなに?具体的に今までとどう変わるの?」


独り言のように呟く俺に、机に向かって勉強していた悠太が少し振り向いた。
その表情は呆れたもので、きっと片割れの俺じゃないとその表情の解説はできない。


「祐希くん、沙奈と付き合い始めてからそればっかりだね」

「だってさ…」


沙奈と付き合い始めて、約半年。
付き合い始めてから何か変わったかと言われれば、何も変わってない。
ホントになんにも。


「…デートでもすればいいんじゃないですか」

「デート?」


というわけで、休日に沙奈を誘ってデートすることになりました。

誘った時、沙奈は物凄く奇怪な顔をしていた。
物凄く面倒くさい、みたいな。

っていうか、俺はなんでこんなに早く来てしまったんだろう。
待ち合わせの時間まで、あと20分くらいはあるよこれ。
なにして過ごせばいいの、この時間。漫画持って来ればよかった。

…さっそく帰りたいです。


『せっかくの休みになんであんたと出かけなきゃいけないんだよ…もっと寝てたかったのに』


待ち合わせの時間から10分遅れてやってきた沙奈はさっそく文句を垂れた。

ホントに可愛くない。

しかも何、そのカッコ…
Tシャツに短パンって、どこのわんぱく坊主ですか。
完璧にちょっとそこのコンビニまでスタイルだよね、それ。

…ホントに可愛くない。


『…なによ、その目は』

「…ちょっと期待してた俺がバカでした…」

『はっ?なにを期待してたって?』

「ちょっとかわいい沙奈ちゃんを、ですよ」


口元を手で隠してそう言うと、沙奈がぽかんと口を半開きにして固まった。


『ば…!!っかじゃないの…あたしがいきなりヒラヒラのスカートとかはいてきたら…おかしいでしょ』

「爆笑します。間違いなく」

『でしょ!しかもそんなの物凄く気合い入れてきたみたいであたしが嫌だ!!』


その顔は真っ赤だ。
可愛くないけど、かわいい。

はいはい、と沙奈の隣に立って手を握ると、わぁっと間抜けな声を上げて手を払われた。

照れ屋で、意地っ張りで、口を開けば文句ばかりの可愛くない彼女。
全然可愛くないけど、かわいい俺の彼女。


「ねぇ、今度のデートはスカートはいてきてね」

『………絶対、やだ』




*境界線上の彼女*end

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