short
□ナミダ
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泣き虫な君にお似合いの透明な涙が、ポロポロ小さな雫となって溢れ、その柔らかそうな頬の上を滑り落ちてく。
俺は呆れ果てて、盛大にため息を吐いた。
目の前にいる少女は、声を押し殺して泣きじゃくっている。
壁に寄りかかった俺の腰に、腕を巻きつけてくっついてくる少女の重みを感じて、ズルズルと壁を滑る背中。
胸あたりに顔を埋め、視界の下の方にある少女の頭をクシャクシャ撫でた。
俺はお前が好きで。
お前は悠太が好き。
完璧な一方通行の恋が、ひとつ終わった。
「…沙奈」
俺の声で、涙でぐちゃぐちゃになった顔が上がる。
なんだこれ…
心臓が潰される。
ぎゅうッとキツく抱き締めると、少し苦しそうな声が短く漏れた。
傷ついた沙奈を、腕いっぱいに感じた。
細くて小さな肩が、より一層華奢に感じた。
好きだ…
その言葉は声にならずに、俺の喉の奥で居心地悪く詰まったまま。
いつか、お前が笑った時は
その時はきっと…
届けばいい。
*end