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□ケダモノ男子。
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あ、ヤバイ…食べられる。
そう思った時には、だいたいもう遅い。
いつも眠そうに虚ろな瞳が、その時だけは鋭く光る。
蛇に睨まれた蛙状態のあたしは、おとなしく食べられてしまおうと、諦めるのだ。
『…ゆーき…っ』
「え…もーダメ?」
『この、キス魔っ…』
口元を制服の袖で拭ったあたしは、頭一つ分背の高い祐希をキッと見上げた。
ダメってゆーかね。
息できないんだよ。
息つぎくらいさせてよ、死んじゃうから。
祐希は学校でも構わずこうやって人目から逃れては私にキスしてくる、信じられないキス魔です。
そりゃ、私は嬉しい気持ちもあるけど。ちょっとは自重してください!って感じですよ?
見られたら、どーすんの…
たぶん祐希は全然気にしないだろうけども。
むーって唇を尖らせ、ジトッとした目つきで私を覗き込む祐希の顔が可愛い。
ちゅって音を立てて祐希の唇が私のおでこから離れた。
きゅーんって締め付けられる心臓を押さえて、私は赤くなっているであろう顔を隠すように、祐希の胸にグリグリ押し付ける。
「あー、もー…」
微かな祐希の呟きと、私の吐息が重なった。
この、ケダモノめ…っ
どちらからともなく、貪欲に求め合い、奪い合う。
そんなキスに、私は祐希の鼓動を、祐希の吐息を感じる。
もう…
キスだけじゃ、満足できなくなるの。
責任取ってよね??
*ケダモノ男子*end