short
□だいすき
1ページ/4ページ
塚原 要。
私の彼氏です。
今日も難しい顔をして、黒板に数式を並べていきます。
チョークをカリカリ鳴らして、スラスラ浮き出てくる数式はまるで暗号。
要、かっこいー!!!
キラキラした目で要にラブビームを送る私。
要は、眼鏡を指で押し上げながらチョークを置いた。
ふと交差する視線に、胸が高鳴る。
せっかく合った目をフイッと一瞬にして反らした要は、私の横をすり抜けて自分の席についた。
むー…なんかこう…
もーちょっと反応してくれよ。
すれ違う瞬間にニッコリ…とか?
……うわ…ないない。
ないわー。
要がそんなことしたら、むしろ気持ち悪い(失礼)
ノートの端、仏頂面に黒髪眼鏡の少年を描く。
思ったより可愛く描けたので、その隣に笑顔の要。その隣に怒ってる要。照れてる要。
ふふ、かーわーいー♪
コツンッ
と、頭に丸まった教科書が落ちてきて、顔を上げるとニッコリ笑顔の先生が私を見下ろしていた。
『あ"』
「なんですか?これは?」
先生が私のノートを取り上げ、怒りを彷彿とさせる笑顔で尋ねてきたので、私は元気よく答えた。
『はい!怒った要とー照れた要とー笑った要と』
「アホかーーーー!!」
いつの間にかそばに立っている要が、スパン!!と良い音を立てて私の頭を叩いた。
クラスメイトの笑い声が教室中に駆け巡る。
『なによー!授業中くらい要を堪能させてよー!!』
「頼むから授業中くらい勉強しろよ!!」
なんだよ堪能って…と、息をつき頭をかくと、周りの冷やかしの声も聞こえないふりで自分の席に戻ってく。
もー…
要ってば照れ屋さんなんだから…
私は今この場で、大好きって叫んでもいいくらいなのに。
でもそれは、要が口も聞いてくれなくなるくらい怒るだろうからやめる。
『要は愛情表現が足りない』
廊下の壁に寄り掛かり、読んでいた本から視線を外した要は「あぁ?」と私を横目でチラリ。
眉間にシワを寄せて、私より少し背の高い要が私を見下ろし、持っていた開きっ放しの本で顔を隠した。
「なんだって?」
『愛情表現!!』
要は、片方の口の端をピクリと上げる。
*