short

□だいすき
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塚原 要。
私の彼氏です。

今日も難しい顔をして、黒板に数式を並べていきます。

チョークをカリカリ鳴らして、スラスラ浮き出てくる数式はまるで暗号。

要、かっこいー!!!

キラキラした目で要にラブビームを送る私。
要は、眼鏡を指で押し上げながらチョークを置いた。

ふと交差する視線に、胸が高鳴る。

せっかく合った目をフイッと一瞬にして反らした要は、私の横をすり抜けて自分の席についた。


むー…なんかこう…
もーちょっと反応してくれよ。

すれ違う瞬間にニッコリ…とか?


……うわ…ないない。
ないわー。

要がそんなことしたら、むしろ気持ち悪い(失礼)

ノートの端、仏頂面に黒髪眼鏡の少年を描く。
思ったより可愛く描けたので、その隣に笑顔の要。その隣に怒ってる要。照れてる要。


ふふ、かーわーいー♪


コツンッ
と、頭に丸まった教科書が落ちてきて、顔を上げるとニッコリ笑顔の先生が私を見下ろしていた。


『あ"』

「なんですか?これは?」


先生が私のノートを取り上げ、怒りを彷彿とさせる笑顔で尋ねてきたので、私は元気よく答えた。


『はい!怒った要とー照れた要とー笑った要と』

「アホかーーーー!!」


いつの間にかそばに立っている要が、スパン!!と良い音を立てて私の頭を叩いた。

クラスメイトの笑い声が教室中に駆け巡る。


『なによー!授業中くらい要を堪能させてよー!!』

「頼むから授業中くらい勉強しろよ!!」


なんだよ堪能って…と、息をつき頭をかくと、周りの冷やかしの声も聞こえないふりで自分の席に戻ってく。


もー…
要ってば照れ屋さんなんだから…

私は今この場で、大好きって叫んでもいいくらいなのに。

でもそれは、要が口も聞いてくれなくなるくらい怒るだろうからやめる。



『要は愛情表現が足りない』


廊下の壁に寄り掛かり、読んでいた本から視線を外した要は「あぁ?」と私を横目でチラリ。

眉間にシワを寄せて、私より少し背の高い要が私を見下ろし、持っていた開きっ放しの本で顔を隠した。


「なんだって?」

『愛情表現!!』


要は、片方の口の端をピクリと上げる。





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