君と僕。〜only you〜

□22.ハラヘリハラホレ
1ページ/5ページ





冬休みが終わり、新学期となりました。
白い息を手のひらにハァッと吐きかけて擦り、隣に腰掛けた要に寄りかかった。要は嫌そうに顔を歪めているけど、この際気にしないことにした。
だって要あったかいんだもん。

階段にみんなで腰掛けて、それぞれが手にしたみかんの皮を剥いている。
窓の外ではしんしんと雪が降っていた。積もりそうな雪だ。


千「みかんの白い部分取ってから食べる人ー」


しーん


千「取らないで食べる人ー」


要以外の全員がそれに手をあげると「だよねぇ」と千鶴がもうどうでもよさそうに言った。

それぞれがペリペリとみかんの皮を向いて口に放り込む。


悠「っていうか、この白い部分に栄養があるんでしょ。テレビで見たけど」

知那『あーあたしも見た気がするー』

千「へぇー。じゃあなおさら取る必要ないんじゃん」

要「………」

春「栄養って、なんの栄養ですか?」

悠「んー、たぶんビタミンなんちゃら…」

祐「とりあえず食べとけばいいよ。食べとけば」

知那『冬と言えばこたつにみかんだよね』

千「はぁー早く夏来い、夏ーっ」

要「………」


グダグダグダグダ取り留めのない内容の薄い会話が続くのを、魚が死んだような目で見ていた要。

その視線に気付いた要以外の全員が「…はい?」と要に顔を向ける。


要「なんかつくづくヒマなんだなお前ら」

千「うわ、しっつれーしちゃう!こちとらヒマな時間をどう潰そうか考えるので大忙しだっつーんだよ!」

要「ヒマなんじゃねぇか」

知那『要、あーん』


要の剥いているみかんに向かって口を開ける。


要「甘えてんじゃねぇよ」

知那『いいじゃん別に…ケチ』

悠「なんか今日のみかんあんまり甘くないね」

要「あーあれだ。揉むと甘くなるんだってよ」


えぇ?と蔑むような視線で要を横目で見る祐希。


祐「揉むとか言ってるよこの人… 知那離れて。揉まれるよそのうち。この人揉むの好きだから」

要「言っとくがさっきから揉む揉む言ってんのおめーだから」


祐希が知那と要を引き剥がそうとするので『なにすんの!』と抵抗する知那。


悠「知那、今日はやたらと要にベッタリだね」

春「知那ちゃん、冬はいつもそうですよね?」

知那『だって要が一番体温高い気がするんだもん』


知那の言葉にみんなが深く頷いた。


祐「まぁ、常に血管沸騰してるようなもんだもんね。要は。すぐ怒るし」

知那『ね。そりゃあったかい気がするよね』

要「お前らマジで俺をイラッとさせんの得意だよな」


はぁ、と悠太が白い息を吐きながらみかんを口に放り込む。


悠「みかんもいいけど、うどん食べたいね」

祐「おでんとか」

知那『お鍋とか』

春「いいですね!」


また始まったよ、どうでもいい会話…と頭を抱えた要。
千鶴が背中を丸めて「とにかくあったかいもん食いてーっ」と項垂れた。

窓の外では雪がチラつく。
ブルリと身体を震わせて、知那は自分でみかんを剥きはじめた。






次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ