『僕が魔王として君臨したら、貴方は心を奪ってくれますか?』
□春は多忙と嵐の前触れ
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冷めた雰囲気の持ち主が、人間の生涯を見守っているのだから奇想天外だ。
「あ、けど…レイナ様なら、アルザリ様と下界旅行をするとかしないとか。太古には出来なかった事を現代でやるそうです」
「頭痛い…」
「えぇ…。兄様は、下界に何、爆弾を投げに行くのかを考えたら…私も胃が痛くなります」
「ー…頼むから、あの夫婦、一度、夫婦の在り方を考えた方が良いじゃないのか。アルザリが、レイナを押さえているからとかじゃなく、甘いんだ。本当に、あの薔薇色、見た事あるか?アルザリの雰囲気、柔らかいんだ…」
変な空気が、漂う執務室。
話がかなり逸れているが、問題はメイカの機嫌の悪さじゃないだろうか。
「そう言えば、レイナ様も雰囲気が柔らかいですよね」
「…当たり前だ。あの二人、ちゃんと恋愛している」
アルストムが、吐いた。
「随分、立つけどな。レイナが魔界へ堕ちてきた頃から恋愛の些かいがあった。アルザリ、凄くモテるんだ。だけど、本気になれない男でな。若い頃は結構酷かった」
昔を懐かしむ様に、彼は、語り始めた。
メイカは、きょとんとした顔をした。大伯父が、アルザリ卿の話をするのは初めてだ。
「お嬢様は、アルザリ様を見た時、どう、想ったんでしょうか」
「ー…さぁな。多分、劣等感とかが、含まれた感情が交差していたのか、それか『貴方には堕ちない』と思っていたのかも知れない」
祖母も、酔った勢いで語る場合がある。
『お嬢様は、どうしてアルザリ卿を夫として選んだのか不思議です。天界に居る頃は、ちゃんと好きな相手が居たんですよ』と話してくれた。
好きな相手が誰か解らないが、彼女は本当に愛していたんだと思う。
『…決して、結ばれる事は無いのです。國は許してくれないから。でも、アルザリと出逢って、色々視界が変わりました。私、彼と契りを交わせて良かったと思いますの。後ね、アルゼス、私達、やっぱり合わせ鏡ね』
ふんわりと、浮かべた儚い笑顔が痛い。
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