『僕が魔族として生まれた時、貴方が抱いて下さい』
□エピローグ
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ハヅキの顔は三つぐらいある。
総司令官としての顔、母親としての顔、妻としての顔。今の表情は完全に母親としての顔であり、その上で発言はウリエル受け譲りなのである。
長年と一緒に居てきて漸く気付いた事ではあるが、愛らしい表情でウリエルみたいな留めの科白を出すのは止して欲しいものだ。
たまに、ウリエルを目指しているんじゃないかと気が気でならない時がある。ハヅキにとって母親であるウリエルは一番の存在なのを知っている。
だからか、思う事が偶々あっても実際は目指して欲しくないのが本心。
「ふぅー…アルストムとメイカは、あの瞬間からスタートしたんだ。私達は見守るべきポジションだろう?」
「親として見守るのが…二人の為だとは解っていますけど…」
不服そうな表情を浮かべるハヅキに…
「大丈夫だ。意外にメイカは私に似ている部分があるからな。落とすと決めたら、落とす…」
「何か…嬉しそうじゃないですか?」
「あぁ、嬉しいよ。息子に春が来た事が…」
赤金色の双眸は何時になく優しい色合いを見せていた。
セリデュクのそんな表情を見てしまえば、ハヅキも黙るしか出来なかった。