『僕が魔族として生まれた時、貴方が抱いて下さい』
□プロローグ
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首を傾げ、メイカと呼ばれた青年は尋ねる。紅茶を注がれたカップを渡され、母親は椅子に座った。
「イルア様推しの紅茶だよ。祖母君は、どちらかというとアールグレイかダージリン派なんだ…」
「へーっ」
「紅茶好きには変わりないんだけどね…」
「確か、レイナ様も紅茶が好きですよね?先日、アールグレイをふんだんに使ったパウンドケーキを頂きました…」
親子で会話するのは三週間ぶりになる。
両親共に忙しく、殆ど会話といった会話をしない。忙しい事を解っているメイカや妹達は一度も『寂しい』と感じた事は無い。
時間が空いた時だけ、こうやって話してくれれば十分過ぎるくらいだ。
「あぁ、お嬢様は大の紅茶好きだよ。そのお陰でティーベル邸のキッチンが凄い事になっているとアルゼス様が嘆いていた…」
何となく想像が出来てしまうメイカ。