『僕が魔族として生まれた時、貴方が抱いて下さい』
□プロローグ
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―魔界・ブェルブニ城・セイテーラの寝室
紙にペンを滑らせる音がする。
窓から入る夜風が、美しい金色の髪を撫でながら抜けていく。青年は真面目な表情をし、何かを書いている様子。
すらすらと字を並べていく。
書いている文字からすると、古代魔界語。横には分厚い本が開かれていた。
「メイカ、入るよ…」
「あ、はい…母様」
扉が開かれ、トレンチにティーセットを持ってきた母親へ視線を移す。
「勉強熱心なのは良いけど…無理しちゃ駄目だよ?」
コトンっとテーブルにトレンチを置く。
カップに温かい紅茶を注ぎながら話す母親。
「解っております。それより…今宵の紅茶はオレンジ・ペコーですね!」
「当たり…」
「祖母様お薦めですか?」