『僕が魔王として君臨したら、貴方は心を奪ってくれますか?』

□華々しい夢物語
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―魔界・ブェルブニ城・メイカの寝室


柔らかいシーツの感触が堪らなく、眠りに誘う。醒めてはいけないと言われている感じがして、瞳を開けるのはまだ早い。


『君の願いを叶えてあげるよ?』


見知った声…。


『貴方は…誰?』


『…秘密』


白く細い指が口元にあてられる。
地に届く長い髪が、さらっと揺れた。

ほんのり色付いた紅い唇が妖しく言葉を紡いでいった。
『君は魔王になる為に選ばれたんだよ』と。誰もが見惚れそうな表情をして…。
僕の母親となる存在は穏やかな微笑みを浮かべた。

あの表情は、祖母様が時折見せる温かな顔に似ている。
何処までも穏やかで、温かい。本来持ち合わせている慈悲深さ…。


――…そんな感じがした。
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