『僕が魔族として生まれた時、貴方が抱いて下さい』
□人間
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真っ白な雪が降る中、一人の青年は細く白い手で雪の粒を握る。
後少しで、自分も同じ様に消えていく…
この…
白き雪の様に。
『セイカ…外は冷える。さぁ…家の中へ』
『もう少し…もう少しだけ…』
『駄目だ。これ以上は…』
『あ』
黒い髪をした男性が青年を抱き上げた。
『頼むから……あの雪と自分を重ねるなどしないでくれ』
『…』
彼は気付いてないかも知れないが、何時も同じ表情をする。
光の反射加減で金色にも見える紅い双眸から悲しみを帯びた色を顕し、今にでも啼きそうな顔。
青年は、その表情を外に出る度…
見ている。
――…アルストム
突然と自分の前に姿を現した悪魔に見えない悪魔。
最初は、天使だと思った。
美しい形をしていたものだから…
けど、天使には似つかわしい羽根が彼を覆っていたのだ。