企画もの

□ハロウィン2011
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 サキュバスのポールダンサーが長い髪を振り乱してトランスしている。その足下に群がる世界各国のモンスターたちは、色とりどりのライトに照らされ、不気味さを増していた。

 ライダースを着込んだ骸骨がバーカウンターに肘を乗せると、メタルチェックのスーツを着て毒々しい孔雀の飾り羽の山高帽を被る道化師がテキーラとライムを差し出す。道化師の人懐っこい笑みに礼を返すと、骸骨の彼の隣に黒い格好をした上背のある人間の男が並んだ。

 骸骨にはない肉の鎧を服に包んだ人間の肌は浅黒く、南の者だとすぐに知れる。
 銀色の髪をしたその人間は、ギネスを道化師に頼んだ。が、道化師の答えは一つらしく、骸骨と同じものを突き出し、こう言った。

「これからの時間帯は、テキーラだけだ。乱痴気騒ぎにはキツい酒。そうだろ?」
 人間は肩を竦めると、テキーラを事も無げに飲み干した。

 そのとき、骸骨の背中に軽い衝撃が襲った。直後、ごめん、と謝罪を叫ぶ女の声。

 骸骨が振り返った目の前に、大きな耳をした猫か狐か。それが丸く目をみはるという、可愛らしい顔をして骸骨を見上げている。

「可愛いな、君。狼かい?」
 骸骨がおどけると、しかし、その可愛らしい狼ちゃんはキョトンとしたままでいる。硬直していることはわかったが、理由がわからない。骸骨が首を傾げるとちょうど、ライムグリーンのライトがフロア中を攻撃し始め、モンスターたちの顔や衣装に緑や紫の血液が滴った。無論、骸骨の彼など顔面がライムグリーンだ。

 それをきっかけに、狼ちゃんは唐突に顔を歪めて飛び込むように、骸骨の隣に立っていた人間の腕に。
 銀の髪の彼は、狼ちゃんのご主人さま、といったところか。ならばモンスターハンター?上手く手懐けたのか、気に入られているのか、狼ちゃんは親を見つけた迷子みたいにご主人さんにしがみついている。撫でられてもいないのに。
 狩人は顔色ひとつ変えないプロらしい。

 骸骨は肩を竦め、マスクの下の生身の口をさらけ出してテキーラを煽りライムをかじると、フロアで踊っている仲間のもとへと戻っていった。仲間も揃ってモンスターの姿をしている。イカれたハロウィンパーティは始まったばかりだ。
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