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□それも愛 これも愛 きっと愛
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「何も現場に立ち会わせるわけじゃねーんだ。オメーが組織にいられるのは、そのスタンド能力のおかげでもある。だったら、それをオレ達のために使うのも、当然のことじゃねーのか。ああ?」
それは良くわかる。正に耳に痛いほど、聞かされた言葉だ。女が連絡係でもなく組織で働いているのは、アタシしかいない。全ては、情報収集のためにこそ生まれたんじゃないかっていうスタンド能力サマサマだ。
でも、だけど、だからって。
暗殺チームに人身御供として、我が上司、清掃チームリーダーにアタシは売られたのだ。子牛の気持ちがよくわかる。
しかしながら、大人しくドナドナされると思ったら大間違いだ。
「アンタの言ってることはよーっくわかる。真っ当なことを言っているし、正しい。あ、痛いッ!」
「平然とした顔でスタンド出そうとしてんじゃねえぞ。おら」
「痛い痛い痛い、いた、あーッ!あーッ!千切れる!ピリッってナルカラッ!」
「よく聞けよォッ!テメーはッ、組織で生きると決めたその日から、スデにこうなることも覚悟しておく必要があった!まだしてないならッ!今、ココで!その覚悟をしろッ!」
「横暴だッ!いッつァ!」
「ああ!?甘えたこと抜かしてンじゃあねー!テメーはそこら辺の女どもとはワケが違うんだッ!いいか!?」
そう言いながら、プロシュートはアタシの額に、綺麗な額をぶっつけた。目の前に赤い火花と涙が散る。
「くおォ……っつァ」
「ナナシナナシナナシナナシよォ〜」
名前の回数分だけ額をぶっつけ直され、長い睫毛が肌に刺さりそうで怖い。もう痛みなんか淘汰されてしまって、いや、そうならいいのに、現実はちっとも容赦してくれない。涙が滲んだ。
「オメーはとてつもない能力を秘めている!オレはそれを知っている!自信を持てッ!オメーならやれる。できる!成長する力を持っているんだぞ!オメーを信じるオレを信じろッ!ナナシッ!」
「だって、兄貴……」
「まだ言うのか、テメーは!このマンモーナが!」
「だってアタシがスタンド発動中!身動き取れないのをイイコトに、メローネが抱きつくンだよッ!?撫で回してンだよッ!?そのうちベッドに連れ込まれるに決まってる!」
「…………は?」
「それさえなければ喜んで手伝いでもなんでもするわよッ!」
途端に開放されたアタシは、すでに感覚すらない耳と、痛いのか熱いのかわからない額を押さえ、うずくまった。
吐き気は一気にクライマックスへ向かう。携帯していたビニール袋を広げて、アタシは盛大に、プロシュートが呆けている空間で太陽に見守られながら、胃の中身をぶち撒けた。