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□それも愛 これも愛 きっと愛
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 昨夜の酒が残ったままの重い頭をさらに重くするようなリーダーの一言で、アタシは吐き気を抑えて口癖は抑えず、サンタルチアの近くのホテルの屋上まで飛んできた。地下駐車場の車中の遺体は、見られても何ら問題ないようにするのは朝飯前。

 アタシは何より待たせられるのが大嫌いだって言うのに、しかも今は二日酔いで頭がガンガンしてきて機嫌がディ・モールト悪い。さらに趣味の時間を奪われたのだから、怒ったって仕方がないと思うの。

 そして極めつけはこの天気。溶けてしまえという啓示か。コレは。神様なんか信じちゃいないけど。アタシの神様は腰に住んでいる太陽のタトゥーだ。それ以外には何も信じちゃいないのさ。

 フィルターを噛み千切りそうになりながら、アタシは隣の塊を蹴飛ばした。

「vaffanculo。アンタはどこの政治家?それとも資産家?」
 唸るような低い声の問いかけに答えはない。そのはずなのに。

「どっちもハズレだ」

 返ってきた言葉にぐるりと首を廻らして、睨み付けたのは暗殺チームのプロシュート。

 高いスーツを着て、緑の石の首飾りを鳩尾辺りでぶらつかせ、金の髪を結った背の高い男は、綺麗な顔をしてアタシを見下ろしている。ホテルの屋上の、ダクトが剥きだしで列を成している一角で、アタシ達は落ち合った。

 そしてアタシはベスビオス火山のように噴火する。座り込んだままの格好で。

「プロシュートッ!アンタはアタシまで干乾びさせる気なのッ!?五分で済むっていうからこの炎天下で、死体とシエスタだって我慢してたのに!?だいたい何で、今回に限ってアンタを待たなきゃいけないワケ?十分も女を待たせるなんてどれだけイイ男!?フッざけんじゃないわよッ!確かに?アンタの顔といい体といい、モデルに喧嘩売ったってボロ勝ちなのは目に見えてるケドォッ!?」
「けなしてんのか、ホメてんのか、どっちだ。オメーは」
「怒ってんだッ!」
「あぁーそりゃそうだな」
「わかった!?」
「ああ」
「なら良ぉーしッ!」

 一通り喚き散らしてもまだ足りないけど、頭痛がひどくて続けていられない。まだ胃の辺りで燻っている熱が、違う意味で逆流しそうだけど、アタシが怒っていることはしっかり通じたので良しとする。
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