小説【3Z】

□夕焼けの空、笑顔の君
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「――――、――――……ち……」
「……んぁ?」
「聞いてるっスか銀八!」
「ん、おぉ、聞いてる聞いてる」

何でこんなことになったのか、自分でもよくわからない。
早めに仕事を切り上げて帰ろうかと思った矢先、コイツ……うるさい黄色頭に捕まった。
俺の担当するクラスの生徒、来島また子。
職員室を出るなり、ついて来いと腕を引っ張られた。
何だと聞けば黙ってろと返ってくる。
学校を出てしばらく歩いて辿り着いたのは、学校からそう離れていない公園だった。
公園に一歩足を踏み入れるなり、来島は足を止めた。
俯いて何も言わない。
外は、とても綺麗な夕焼けだった。
夕日の為に朱く染まった公園には人っ子一人おらず、どこか寂しい雰囲気を漂わせていた。

「……何だ、話でもあるのか」
「…………」

無言。

「……学校では話せねえか」
「……」

無言。
さっきまでの威勢はどうしたと言いたくなる。
不意に俺の腕を掴んでいた来島の手の力が緩んだ。
このまま帰っても気づかれなさそうだが、こんな状態のコイツを置いて帰るのも後味が悪い。
近くのブランコまで歩いていき、俺は腰を掛けた。
ポケットから煙草を取り出し、吸い始める。
一服したところで、来島がこちらに向かって歩いてきた。
ブランコの前の柵に軽く座り、来島は真っ直ぐ俺を見据えた。
そして軽く息を吐いて、話し始めた。
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