小説【3Z】

□風邪のときだけは。
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ある月曜日の朝。
少し肌寒いこの季節、町を歩けば、マスクをしている人をちらほら見かけるようになる。

(軟弱なヤロー共っス。身体も心も弱いから風邪なんてひくんスよ)
そんなことを考えながら、来島また子は学校への道を歩く。
しばらく歩くと見慣れた姿を見つけ、また子は声をかけた。
「武市先輩」
「……おや、貴女でしたか」
同じ高杉一派である武市変平太が振り向くと、また子は苦々しい顔をした。
「先輩もマスクしてんスか」
「風邪は予防が大切ですからね」
「なーに言ってんスか。風邪なんてひくのは弱いからっス。私なんてここ何年か風邪なんてひいてないっスよ」
「何とかは風邪をひかないと言いますしねバカ」
「オメーがバカ。つーかはっきり言っちゃってるんスけど。……まぁ、別に私は昨日熱が37度7分あって頭も痛かったっスけど、自力で治したから大丈夫っス。身体が丈夫なんス」
「何年かひいてないどころか、昨日ひいてたんじゃないですか」
「8度以下は熱じゃないっス」
「……とりあえずマスクを付けて……」
「嫌っス」
「子供ですか貴女は……おや、高杉さん。おはようございます」
「あァ」
また子は慌てて高杉の方を見た。
―――高杉一派のリーダー、高杉晋助がそこにいた。
そしてまた子は高杉に挨拶をして―――

「おはようございまっス、晋助さ―――ぶえっくしょい!!」

盛大にくしゃみをぶちかました。
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