Infinite Sky
□四章 気付きながらも答えられない気持ち
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次の日の朝
〜1年1組の教室〜
「おはよう、清夜」
教室に入ってきた清夜を見つけた一夏は、いつものように声をかける。
『ああ、一夏、おはよう。』
清夜もいつものように声を返す。しかし、
「ん?、何かあったのか?」
一夏は首を少し傾げながら清夜に聞く。
『...そう見えるか?』
「見える」
別に清夜が隠すの下手というわけではないだろう。
『はぁ、その勘の良さを箒にも使ってやれよ...』
清夜は呆れ半分で言う。
一夏は意味がわからないのだろう。
「なんでそこで箒がでてくるんだ?」
『...』
(マスター、彼は本気で言ってるのでしょうか?)
リヴは信じられないようだ。
『(こいつは本気だよ、リヴ)』
清夜は苦笑しながらリヴと会話する。
もちろん、二人は脳で会話しているから、一夏はなぜ清夜が苦笑しているのかわからず、余計に顔を傾げていた。
『なに、気にするな。たいしたことじゃないから。』
「そうか...」
少し不満そうにしていたが、とりあえず納得したようだ。
『(これじゃ箒もまだまだ苦労するな)』
(鈴さん達に比べたらまだましですよ)
『(なんでだよ?)』
(対象が貴方だからですよ)
『(どういう意味だコラ!!)』
清夜は意味不明とでも言うように怒鳴る。
(貴方はいつまで知らないフリをしているのですか?)
リヴが少し声を固くして言う。
『...』
清夜は言葉を無くす。
(...)
リヴも黙っている。
そして、清夜はまた苦笑する。
『(想いに応えてあげろって言うのか?)』
(まさか、なに言ってるんですか。寝惚けるのは朝だけにしてください。)
リヴはしれっとして言う。
(マスターは私だけのマスターです。)
続けてとんでもないことを当たり前の様に口走る。
『は?』
余りにも予想外の言葉に呆気にとられてリアルに声を出す。
隣の一夏が不思議そうにこっちを視ていた。
(っ!?...あっ、あ..)
リヴが今自分が何を口走ったのか気づいた様だ。
『...』
(...)
『...』
(...)
お互い沈黙する。
『なに、お前俺が好きなの?』
(死んでください...今すぐ死んでください!! しゃべらないでください! 馬鹿なんです!! 私は今故障しているのです!! 風邪をひいてるのです!! 熱があるのです!!!)
『(しっかりしろリヴ!! お前は正常だ!! 正常じゃないが正常だ!!)』
(うわ〜ん!!!!!!!)
首にかけている待機状態のリヴが熱を持ち始める。
『これはそっとしとくべきだな...』
そう心の中で思いながら席につく清夜だった。
「今回のクラス対抗戦は2対2の試合となった。」
「「『え!!』」」
授業の三時限目の終わり...千冬の言葉にクラスの皆が驚いた声をあげる。
『織斑先生、急にどうしてですか?』
即座に清夜が聞く。
「ああ、今から話す。今年の一年生は専用機持ちが多いとの話になってな。1組と2組限定との話だが、それぞれの専用機持ちの力量を計りたいのだろう。」
「でも、後一人って誰にすんだよ?」
一夏が聞いてくる。
すると、すかさずセシリアが
「わたくしに決まっていますわ。」
自信満々の顔で名乗りをあげる。
「それは十六夜に決めてもらう。」
千冬が釘を射す。
『やっぱ俺が決めんのね...』
「当たり前だ。お前の背中を預ける奴だからな。」
千冬がきっぱりと言う。
『背中を預けるね...』
そう言いながらセシリアを見る。
セシリアはずっと清夜を見ていたが、目が合うと顔を赤くして目を伏せる。
(妥当なのはセシリアだな。だけど...)
そう心の中で思い一夏を見る。
一夏は難しい顔をして机を睨んでいたが、覚悟を決めた様子でかおをあげる。
「清夜...俺を選んでくれないか?」
「「「!?」」」
クラスの皆が一斉に一夏を驚いた目で見る。
箒だけがよくやったという顔で一夏を見ていた。
そして納得のいかない人物が一人...
「駄目ですわ!! タッグマッチのパートナーはわたくし以外にあり得ませんわ!!」
セシリアが席を立ち抗議する。
「ああ、確かに俺では役不足かもしれない...けど...それでもお前と一緒に戦ってみたい。頼む...清夜!!」
一夏の瞳は何かの決意と、戦いに焦がれる瞳だった。
『そこまで言うのなら...見せてみろ一夏! お前の決意を』
「ああ、お前と絶対に肩を並べてみせる! 肩を並べて戦友として背中を預けてもらえる友に!!」
一夏は清夜が一人で背負い込まない様に、清夜は誰かに背中を預けるために。
「納得がいきませんわ...どうして私ではないのですか!!」
しかし、共に戦いたいと願うのは一人じゃない。
『セシリア...』
「わたくしの何が駄目なのですか!! わたくしでは役不足だというのですか!?」
『落ち着けセシリア!!!!!!!』
「ッ!!」
清夜の声で、自分が大声をあげていたことに気付くセシリア。
「す、すみません...わたし...」
『別にお前が役不足って訳じゃない。ただ、一夏は初心者だ。お世辞にもISの扱いが上手いとは言えない。だからこういう機会はこいつにとって操縦を上手くするための絶好の機会なんだ。わかってくれ』
セシリアの頭の上にぽんっと手をおきながら子供に言い聞かせる様に言う。
「わかり...ましたわ」
セシリアは多少渋っていたが、納得したようだった。
『ありがと』
そういいながらセシリアの頭を撫でる。
セシリアは恥ずかしながらも気持ち良さそうにしていた。
「もういいか?」
声をかけられてはっとする、
声の主は千冬さんだった。
千冬さんは胸焼けをしているような顔をしていた。
『おっと、すんません』
セシリアの頭からパッと手をどかす。
それをセシリアはなごりおしそうに見ていた。
「そうか...なら第2のクラス代表は織斑一夏に決定だ!! 異論は無いな!!」
「「『はい!!』」」
クラス全員が元気よく返事をする。