destinys world
□力の片鱗
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〜生徒会室にて〜
「とりあえず、座ったらどうかな?」
「は、はい!」
『ハァ...』
鳶色の髪の少年、レイフォンは緊張した声で答えたものの、指し示されたソファに腰を下ろさなかった。
それに対し、リューネイ・ランドグリーズこと、リュイは、短いため息をついたあと、ソファに腰を下ろす。
今二人が対面している人物は、大きな執務机を前に腰を下ろしている生徒。
レイフォンとは違い、もう大人だと言われても何の問題もないような雰囲気を持っていた。
白銀の髪に飾られた秀麗な顔を、どこか柔和に崩した表情とは裏腹に、銀色の瞳は冷静に物事を判断しようと二人を見ている節がある。
目の前にいる彼は、フェリの実の兄であり、ツェルニの生徒会長である。
「名乗るのが遅れたね。レイフォン君は分からないだろう。私はカリアン・ロスという。六年だ」
ツェルニは六年制の学校であり、つまり彼はなる。
この学園の支配者...
「レイフォン・アルセイフです。」
はっきりとした声で名乗る。
額に冷たい汗を感じた。
カリアンが微笑している。
『性格悪っ...』
リュイがボソッと呟く。
カリアンは、それをスルーして話を続ける。
「別に、君を罰しようというわけではないよ。」
『俺は罰せられるのか...』
「まずは感謝を。君のおかげで新入生たちに怪我人が出ることはなかったよ」
カリアンの瞳には純粋な感謝の念が宿っているようにみえた。
「新入生の帯剣許可を入学半年後にしているのは、こういう、自分がどこにいるかをまだ理解できていない生徒がいるためなのだけれど...やれやれ、毎年のことながら苦労させられるよ」
あくまでも爽やかに苦笑する生徒会長に、レイフォンは気の抜けた相槌をうつ。
『よく言うよ』
リューネイは、軽蔑するようにカリアンを見ていた。
カリアンは、さらに苦笑を濃くするが、切り替えて、元の顔にもどる。
「それにしても、新入生とはいえ武芸科の生徒を一般教養科の君がああも簡単にあしらうなんて、特にリューネイ、君に限っては相手が小隊の人間なのだけれどね?」
前半はレイフォンに、後半はリューネイに言った。
「嗜み程度です」
レイフォンが答える。
『右に同じ。』
リューネイも即答で答える。
「ふむ...」
カリアンは沈黙する。そこへ、
『焦らさないで用件だけ言ったらどうですか? 生徒会長。』
リューネイが言う。
その言葉にカリアンは苦笑する。
「そうだね、最初に言ったけれど、君を罰するつもりなんて最初からないんだよ。レイフォン・ヴォルフシュテイン・アルセイフ君。そして、リューネイ・ディウス・ランドグリーズ君」
名と姓の間に付け加えられた呼称に、レイフォンは目を見開き、リュイを見る。
リュイはため息をつく。
「ディウスって...」
『それで、何の話ですか?』
レイフォンが何か聞こうとしたが、リュイが遮る。
「ああ、そうだね、そこで提案だ。二人とも、一般教養科から武芸科に転科しないかい?。最も、リュイ君には否定権は無いけどね。」
カリアンは微笑みながら言う。
「はっ!?、いや、ちょっと待ってください!」
レイフォンは慌てたように言う。
「僕は、そんなつもりはありません!!」
リュイはそんなレイフォンを見ていた。
するとカリアンが、
「武芸科も一般教養は学ぶとも。いや、どの学科だって三年までは一般教養は選択しなければいけないからね。学ぶことが違うということはないよ」
「そういう問題ではないです」
「では、どういうもんだいかな?」
カリアンの問いかけにレイフォンはぐっと息を詰まらせた。
それを見てカリアンは楽しそうに笑い、それからリュイを見る。
「君はどうだい?リュイ君?」
『ハァ...』
リュイは立ち上がり、カリアンの前までいく。
『レイフォン...』
「は、はい」
急に呼ばれたレイフォンは驚きながらも答える。
『この件については諦めろ。』
「はい...は!? ちょっ、ちょっと待ってください!! 僕は...」
レイフォンが抗議しようとしたが、
『いいから...諦めろ。』
リュイが睨みながら言う。
「っ!!」
その目は本気で、「出ていけ」と言っていることが見ただけで安易に分かる。
「すまないね、レイフォン君。」
カリアンが微笑みながら言う。
「っ...失礼します。」
レイフォンが出ていく。