長編
□07
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「暑い....」
「暑いねー」
私の前の席に座っている女子生徒は、あまりの暑さに机に突っ伏している私を見ては下敷きでパタパタと扇ぎ始めた。
この女子生徒、名前は早織(さおり)と言う。
今まで話の中に出てくることはなかった私の親友である。
「あ、そうそう!」
「?」
「じゃーん!!」
何かを思い出したのか早織は鞄の中を漁ると、嬉しそうに何かを取り出した。なんだろう、と思いつつ顔を上げてみた。
早織が手に持っていたものは。
「ガリューウエーブの新しいアルバムッ!! 買ったのー!」
「うっわぁ...」
そう、早織が取り出したのはガリューウエーブのアルバムだったのだ。きゃっきゃっと頬を赤らめてくねくねと変な動きをしている早織、そしてドン引きをする私。
決して早織を見てドン引きしたのではなく、早織が持っているアルバムのジャケットを見てそう思ったのだ。
だって、雨に打たれてる牙琉さんの半裸のジャケットって...
ドン引きを通り越して笑いそうになってしまった。
「かっこいいよね、このジャケの響也様!!」
「そ、そうかなあ?」
「もーっ。名無しさんもちょっとはガリューウエーブに興味もちなよー」
「わ、私はいいよ」
牙琉さんと知り合ってからのこのジャケットを見て、興味をもちなよと言われても私には無理だよ早織さん。こんなもん見せられたら次牙琉さんを見たときに絶対笑っちゃうよ....
「そういえばさー」
「ん?」
「今度の日曜日さ、名無しさんの家に行ってもいいかな」
「えっ?」
「久々に翔くんとも喋りたいし!」
とニコニコとしている早織。女の私から見ても可愛いと感じるこの笑顔を見てしまっては、どうも断れなくなってしまう。
別に家に来るのはいいんだけど問題は....
早織が居るときに牙琉さんやダイアンさんが来てしまうと、後々大変な事になるんではないかという事。とりあえず今は適当に対処しよう。
「えーっと...ちょっと考えてもいいかな?」
「じゃあ明日までに考えてよー?」
「うん、ありがとう」
「そうそう、それでねー」
そう言うと早織は、アルバムを鞄の中にしまいながら話を続け始めた。
よし、なんとか対処できた... 後は家に帰って考えよう。
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