転生前

□どうやら風邪をひいたようで3
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「御狐神くん。君のおかげで僕は………っ」


目の前に覆い被さる黒い影。温かいものに体が包み込まれる。御狐神くんに再び抱き締められたらしい。僕を取り巻く腕にはさっきより力が籠っていて、少し震えている。

御狐神くんが僕の肩に頭を埋める。いつもなら恥ずかしすぎて叫んでしまうところだが、今日はそんなことは無く、平静を保つ事が出来た。


「ありがとう、ございます……っ僕も、愛しています…!」


「はぁ………だから泣くなと言っているだろう?」


御狐神くんが抱き締めているせいで、身動き出来ない。なんとか手だけを自由にし、顔を上げてと声をかけ、泣き続ける彼の白く綺麗な頬に伝う涙をハンカチで拭ってやる。


「………差しのべられた手には、素直に甘えればいい」


「はい…………では凛々蝶さま」


「なんだ?」


僕の耳元で話す御狐神くん。何となく、声がいつもの調子に戻っている気がする。


「僕が凛々蝶さまに手を差しのべれば、甘えて下さるのですよね?」


「え、いや………え?」


御狐神くんが顔を上げる。ふふ、と不敵に笑っていた。何かを狙うように。


「凛々蝶さまが僕に手を差しのべてくださるのなら、僕は喜んでその手をとり、甘えさせて頂きます。ならば凛々蝶さまはどうなのでしょう」


「どう、というと…?」


「僕に、甘えて下さいますか?」


「はぁ?」


いやいや意味が分からないし。御狐神くんは何を言っているのか…第一僕は、彼に甘えるような事など特に無いし………。


「凛々蝶さま、もう少しで試験なのですよね?風邪をひかれていては、万全に挑む事は出来ません。」



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